機能的非識字とは？意味をやさしく解説

機能的非識字とは

機能的非識字（functional illiteracy）とは、日常生活において、読み書きや計算を必要に応じて使いこなすことが難しい状態を指します。具体的には、文字を読むことはできても、文章の意味や内容を正確に理解することが困難な状態です。これは、単に文字を認識する能力の問題ではなく、文章を読み解き、その情報を活用する能力の欠如を意味します。

機能的非識字の概要

非識字とは異なり、機能的非識字者は簡単な読み書きはできます。しかし、日常生活で遭遇する一定水準以上の文章や情報に対して、内容を正確に理解することができません。例えば、契約書の内容を理解したり、新聞記事を読んで社会情勢を把握したりすることが困難です。個々の単語の意味が理解できても、文章全体の意味を把握することが難しい場合があります。

機能的非識字は、社会生活に様々な支障をきたします。契約内容を理解できないために不利益を被ったり、必要な情報を得られずに社会参加が難しくなったりする可能性があります。また、本人自身も問題に気づいていない場合があり、周囲も識字能力があるように見えるため、問題が潜在化しやすいという特徴があります。

機能的非識字の現状

機能的非識字は、識字率の高い先進国でも無視できない問題です。

アメリカでは、多くの企業が従業員に対して読み書き能力向上のための補習教育を提供しています。また、成人のかなりの割合が、日常的な読み書き活動に困難を抱えているという報告があります。
イギリスでは、成人の一定割合が、小学生レベルの読み書き能力に達していないという調査結果があります。毎年、多く生徒が機能的非識字の状態で学校を卒業しています。
日本でも、中学生の一部が新聞や教科書の内容理解に苦労しているという調査があります。

このように、機能的非識字は、先進国においても深刻な問題として認識されています。

機能的非識字に関する調査研究

機能的非識字は、経済的な損失にも繋がることが指摘されています。職場での読み書き能力不足は、生産性の低下や事故の増加を招き、企業に損害を与える可能性があります。また、社会学的な研究では、機能的非識字率の低い国ほど、若年層の科学的リテラシーが高い傾向があることが示唆されています。

漢字文化圏においては、一定数の漢字を習得していないと文章の内容を正しく理解することが難しいという指摘があります。しかし、アルファベットを使用する言語でも、十分な語彙力が必要であることは同様です。

機能的非識字への対策

機能的非識字は、個人の問題であると同時に、社会全体で取り組むべき課題です。教育機関や地域社会が連携し、読み書き能力向上のためのプログラムを提供する必要があります。また、機能的非識字に苦しむ人々が、安心して学習できる環境を整備することも重要です。さらに、社会全体が、読み書き能力の重要性を認識し、学習を支援する文化を醸成していくことが求められます。

参考文献

赤尾勝己『生涯学習の社会学』玉川大学出版部、1998
ジョナサン・コゾル（著）脇浜義明（翻訳）『非識字社会アメリカ』（世界人権問題叢書）明石書店 1997年 ISBN 4750309184

機能的非識字