檀太郎

檀太郎

檀太郎（だんたろう）氏は、1943年8月29日に東京都で生まれた、日本のエッセイストであり、長年にわたりコマーシャルフィルム（CM）のディレクターとしても活躍している人物です。文学界に名を馳せた作家、檀一雄を父に持ち、女優の檀ふみを妹に持つという、著名な家族背景を持っています。また、妻の檀晴子氏は東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業したエッセイストであり、息子の檀一平太氏は脳科学を専門とする中央大学の教授です。

高校を卒業した檀太郎氏は、当初、演劇の道を志し、俳優座養成所に入所します。しかし、養成所は途中で中退し、その後は俳優活動を経験したり、遠く南アメリカ大陸を放浪したりと、型にはまらない若い時代を過ごしました。定職に就くきっかけとなったのは、大手化粧品会社のCM制作を手伝ったことでした。この経験を通じて広告制作の世界に興味を持ち、大手広告代理店に入社することになります。

広告代理店ではCMディレクターとしてキャリアを積み、数多くの作品を手がけました。そして1987年には独立を決断し、自身の企画会社「エンジンフイルム」を設立します。独立後もCM制作の第一線で活躍する傍ら、作家であった父、檀一雄氏が愛した「食」や「旅」の世界を受け継ぎ、エッセイストとしても精力的に活動を開始します。

エッセイストとしては、グルメや旅に関する分野で多くの著作を発表しています。父の代表作『檀流クッキング』の流れを汲む形で、『新・檀流クッキング』や『檀流ワイルドクッキング』、『自由奔放クッキング』といった料理に関する人気シリーズを刊行しています。また、食に関するエッセイを集めた『好「食」一代男』や、自身の体験に基づいた『檀流エスニック料理』なども手がけています。さらに、父の代表作である『檀流クッキング』の完本化にあたっては、妻の晴子氏と共に共訂を担当し、父から受け継いだ食文化への情熱を現代に伝えています。

執筆活動と並行して、グルメや旅、自身の多彩な経験に基づいた講演活動も積極的に行っています。

大きな転機が訪れたのは2009年でした。長年暮らしていた東京・石神井の自宅が、道路拡張工事に伴う立ち退き対象となったのです。これを機に、檀太郎氏は新たな生活の場として、父・檀一雄氏が晩年を過ごした福岡市西区の能古島を選びます。父の終の棲家となったこの島の旧宅を自ら改装し、現在に至るまで能古島を拠点として活動を続けています。その島での暮らしを綴った『檀流・島暮らし』は、近年の著作として注目を集めています。

メディアへの出演経験もあり、映画『帰郷』に出演したほか、父、檀一雄氏の足跡を辿るドキュメンタリー番組『むかし男ありけり』（RKB毎日放送制作）では、父の生涯や作品世界を紹介する役割を担いました。このドキュメンタリーは、1984年に文化庁芸術祭のテレビドキュメンタリーの部で優秀賞を受賞しています。また、ハウス食品のカレーCMに出演した経験もあります。

CMディレクター、エッセイストとして多岐にわたる活動を展開し、父から受け継いだ豊かな食文化への愛着や、自身の波乱万丈な経験を糧に、精力的な創作・発信活動を続ける人物です。

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