檸檬 (さだまさしの曲)

檸檬について

「檸檬」（れもん）は、1978年3月25日にリリースされたさだまさしのアルバム『私花集』に収録された曲で、同年の8月10日にはシングルとしても発売されました。この楽曲は、梶井基次郎の小説『檸檬』からインスピレーションを受けて制作されており、舞台設定が御茶ノ水に置き換えられている点が特徴です。

曲中には「聖橋からレモンを投げる」という強烈なビジュアルの描写が含まれています。この歌の制作過程において、さだは社会現象として広がる可能性に対する期待とともに、それが実現しないのではないかという不安を抱いていました。彼はこの曲が「白線流し」のようになればと願いながら、その歌詞を紡いだのです。実際に、彼は梶井の作品から得たイメージをもとに、「桜散る」という曲も作っていますが、こうしたアプローチがさだまさしの音楽性に独特の深みを加えています。

シングル盤は、渡辺俊幸による新アレンジが施され、一部歌詞も修正されてリリースされました。コンサートでは基本的にこのアレンジに基づいて演奏されますが、歌詞は元々の『私花集』のヴァージョンが用いられることがほとんどです。このように、同じ楽曲でも異なるアプローチがあることは、さだまさしの音楽の多様性を示しています。

「檸檬」のシングル盤は、前作のシングル「桃花源／晩鐘」に続くリリースであり、いずれもアルバムに由来しています。アルバムが異なるものの、連続してシングルがリリースされることはさだにとっては珍しい出来事でした。また、楽曲のキーはどちらのテイクもホ短調ですが、シングル盤のインナー・スリーヴではイ短調で記譜されています。このインナースリーブには、さだ自身が描いたお茶ノ水橋から見える聖橋のイラストが使用されています。

加速度について

収録曲の一つ「加速度」は、別れを告げる恋人の声音が登場し、それを受け取る側の心情を表現しています。最後のコインが落ちる瞬間、恋が終わるという切ない情景が描かれており、この曲の作曲・編曲を担当した渡辺俊幸は、ビートルズの影響を意識して作られたと言います。また、シングル版にはイントロの前に雨の効果音が追加され、情景をさらに引き立てています。

収録曲一覧

• - SIDE 1

「檸檬」
（作詩・作曲：さだまさし、編曲：渡辺俊幸）

• - SIDE 2

「加速度」
（作詩：さだまさし、作・編曲：渡辺俊幸）

このように、「檸檬」と「加速度」はさだまさしの音楽的な深さと男子性を示す重要な作品です。彼の心の奥底を表現したこれらの曲は、聴く人に深い感情を呼び起こします。

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