櫻画報

櫻画報（さくらがほう）

『櫻画報』は、1970年から1971年にかけて、赤瀬川原平によって描かれた漫画作品です。連載は『朝日ジャーナル』と『ガロ』に掲載され、この時期、日本では学生運動が少しずつ沈静化し始めていました。この作品の特徴は、当時の学生運動についての独特な視点と、その状況における無頓着な参加者たちの姿を描いている点です。

概要

『櫻画報』の内容は、特に大きな理念や思想に基づくものではなく、暴動や闘争に興味を持つ好奇心から参加する学生たちの姿に焦点を当てて描かれています。つまり、学生たちは何らかの信念を持っているのではなく、むしろその雰囲気や状況を楽しむために集まっていたという印象を与えます。この漫画は最初、朝日ジャーナルのグラビアページに掲載されていましたが、次第にその内容が注目を集めるようになりました。

作品内では、架空の企業「櫻画報社」が「朝日ジャーナル」を乗っ取り、自らの媒体として利用するという独特の構図が描かれています。この中で、朝日新聞社は「古新聞、古雑誌」を生産する「古紙回収業者」として描かれ、作品全体には多くのパロディや言葉遊びが散りばめられています。こうした表現は、現代のパロディ文化の発展にも寄与しているとされています。

朝日ジャーナル回収事件

1971年3月19日に発表された『櫻画報』の最終回では、また一つ注目に値する出来事が発生しました。この回では「アカイ アカイ アサヒ」という文が使用され、朝日新聞の題字が太陽の代わりに現れるイラストが添えられている場面が描かれています。さらに、欄外には「朝日は赤くなければ朝日ではないのだ」という文があり、当時の社会情勢と絡めたアプローチが見て取れます。

この最終回によって朝日新聞社の常務会は自主回収の決定を下しました。また、漫画の内容は編集部の上層部に不安を与え、回収理由にはヌードの表紙と内容の誤解を招く恐れがあるとされました。この結果、編集長の更迭や連載の打ち切り、さらには61名の人事異動が行われ、『朝日ジャーナル』自体が2週間休刊される事態に発展しました。

櫻画報の出版物

『櫻画報』の内容は、いくつかの出版物としてまとめられ、今でも多くの読者に親しまれています。具体的な出版物には以下のものがあります。

• - 櫻画報永久保存版（1971年、青林堂、全国書誌番号:75040224）
• - 櫻画報 激動の千二百五十日（1974年、青林堂、全国書誌番号:75049758）
• - 桜画報大全（1977年7月、青林堂、全国書誌番号:78006154）
• - 桜画報大全（文庫）（1985年10月、新潮社、ISBN 4101427011）

このように、『櫻画報』は単に漫画の領域に留まらず、社会の出来事や文化に対する鋭い視点を持った作品としても評価されています。特に、学生運動やその時代背景に対する興味深い描写は、今なお多くの人々に影響を与えています。

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