次の御用日

次の御用日とは

『次の御用日（つぎのごようび）』は、上方落語で人気の高い演目の一つです。この演目は東京の落語界では『しゃっくり政談』または『しゃっくり裁判』という名称でも知られています。この話の特徴は、性別や年齢、身分が異なる多様なキャラクターが登場し、演者の技巧が試される奇声に満ちた滑稽噺であることです。特に演者には高い発声能力が求められます。

上方落語の名人、6代目笑福亭松鶴、2代目桂枝雀、3代目笑福亭仁鶴といった演者がこの作品を得意としていました。

あらすじ

物語は、安堂寺町にある商家「堅気屋」で奉公している丁稚の常吉が主人の佐兵衛から頼まれるところから始まります。佐兵衛は、娘のお糸が縫い物の稽古に行くため、常吉に彼女の供をするよう指示します。この依頼に常吉は初めは不平を漏らしますが、「お糸が常吉を連れたいと言う」と聞くや否や、嬉しさに気を良くし、昼食を急いで終えて外出することにします。

常吉とお糸の二人は、住友の浜と呼ばれる場所に差し掛かります。この場所は日中でも人通りが少なく、薄気味悪さを感じる二人は、心細さで急ぎ足で通り抜けようとします。しかし、そこに大男が近づいてくるのを見た常吉は、「怖い」と言って引き返そうとします。けれども、お糸を天水桶の陰に隠れさせて、男をやり過ごそうとします。

彼らが恐れていた大男の正体は、実は堅気屋の借家に住む纏持ちの藤吉でした。藤吉は暑さから法被を被って顔を隠していたため、女子供には恐ろしい姿に見えたのです。藤吉は知り合いの常吉とお糸に気づき、彼らが恐れていることを面白がって、法被を覆いかぶせた後、奇声を発します。多くの演者はこの奇声を特有の方法で演じ、落語の魅力をさらに引き立てています。お糸は驚きのあまり気絶してしまいます。

その後、常吉は慌てて店に戻り、事情を説明します。店の仲間は倒れたお糸を抱えて帰りますが、介抱の甲斐もなく、お糸は健忘に陥ってしまいます。これに怒った主人は、西の御番所に訴えを出します。奉行は裁判に必要な証人や関係者を呼び、真相を探ることにします。

奉行は証人である常吉に問いただします。「先月13日、娘・糸の頭の上でアッと申したとはどういう意味ですか？」と尋ねると、常吉は「アッではなく、××!!と申した」と証言します。次に、被告の藤吉に対しては同様の尋問を行い、藤吉は当たり障りのない言葉で言い訳を続けます。この奇声の応酬は続き、最後には奉行自身がその様子からおかしみを感じ、普段の声が出せなくなる事態になってしまいます。

「一同、次の御用日を待て」と告げるところで幕が閉じます。これは、演者によって様々なアレンジがなされ、桂枝雀は奉行が照れくささから「本日の裁きはなかったことにしてくれ」と言うようなサゲを付けることもありました。また、笑福亭鶴志はこの物語を改作し、奇声を俗語の絶叫に置き換えた『お目こぼし奉行』を演じています。

エピソード

「住友の浜」という地名は、かつて住友銅吹所があった場所に由来しています。この演目に登場するお糸は、NHKの連続テレビ小説『ちりとてちん』に登場するキャラクターにも影響を与えたことがあります。いかにこの落語が日本の文化に多大な影響を与えてきたのかが伺える点です。

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