欽定教授

英国の大学における栄誉ある地位：欽定教授

英国の大学には、他の国にはない独特の教授職「欽定教授（きんていきょうじゅ）」が存在します。これは、国王または女王から直接任命される教授職であり、その歴史は古く、高い格式と権威を誇ります。

欽定教授の起源は1497年にスコットランド国王ジェームズ4世がアバディーン大学に医学の欽定教授職を創設したことに遡ります。当初は医学分野に限られていましたが、その後、重要な基礎学問分野へと徐々に拡大していきました。現在でも、英国の君主による任命という伝統は維持されており、大学当局や政府も任命プロセスに関与しています。ただし、1922年に独立したアイルランド共和国のダブリン大学は例外です。

欽定教授の任命は、大学や政府による選考プロセスを経て行われます。公募、面接などを経て選ばれた候補者が、君主によって正式に任命されます。この希少性と伝統的な任命方法から、欽定教授の地位は非常に名誉あるものとされ、多くの学者にとって憧れのポストとなっています。

伝統的に、欽定教授は「Professor」ではなく「Regius Professor」の敬称で呼ばれます。これはラテン語の「Regius」（王室の）に由来します。現在、最も多くの欽定教授を抱えているのはグラスゴー大学で、2016年時点で14人の欽定教授が在籍しています。

近年の欽定講座の増加

歴史的には、欽定講座は古くから名高い大学（オックスフォード大学、ケンブリッジ大学など）にのみ設置されてきました。しかし近年、その数は増加傾向にあります。エリザベス2世女王は、即位50周年を記念して2013年に12の新しい欽定講座を創設しました。これは、特定の年に設置された欽定講座の数としては過去最大規模です。さらに、女王の90歳の誕生日を記念して、さらなる欽定講座の新設が検討されました。

各大学の欽定講座

欽定講座は、様々な分野にわたって設置されています。以下は、いくつかの大学の欽定講座の例です。

アバディーン大学: 医学、植物学、英文学、ギリシア語学、人文学、論理学、数学、解剖学、道徳哲学、自然史学、産婦人科学、生理学、外科学など

ケンブリッジ大学: 植物学、民法学、神学、工学、ギリシア語学、ヘブライ語学、現代史学、物理学など

エディンバラ大学: 公法学、修辞学、英文学、天文学、臨床外科学、医科学、法医学、南アジア言語・文化・社会学、工学、地学など

グラスゴー大学: 医学、薬物学、法学、解剖学、天文学、動物学、産婦人科学、外科学、化学、植物学、法医学、治療学、土木工学、機械工学、英語英文学、精密医療など

オックスフォード大学: 民法学、神学、道徳と牧会学、教会史学、ヘブライ語学、医学、ギリシア語学、現代史学、数学など

その他、多くの大学で様々な分野の欽定講座が設置されています。これらの講座は、英国の高等教育における重要な役割を担っており、今後もその発展が期待されています。 これらの講座は、それぞれの大学において、研究や教育の中核をなす重要な役割を担っています。

この急速な増加は、英国政府による高等教育への投資拡大や、現代社会のニーズに対応するための学問分野の拡充という背景が考えられます。 今後も、欽定教授という伝統的な制度が、英国の学術界において重要な役割を担い続けることが予想されます。

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