歌 (橋幸夫の曲)

歌（うた）

「歌」は、日本の歌手である橋幸夫が1999年4月21日にビクターエンタテインメントから発売したシングルです。フィジカルメディアとしては、CD（製品番号：VIDL-30416）およびカセットテープ（製品番号：VISL-30416）の二つの形態でリリースされました。

楽曲制作の背景

橋幸夫は、吉田正と並ぶ昭和歌謡界を代表する作曲家、遠藤実の初期の門下生の一人でした。遠藤氏が当時所属していた日本コロンビアでは、村田英雄をはじめとするベテラン歌手が全盛期であり、少年歌手の受け入れに消極的でした。この状況を打開しようと考えた遠藤氏は、自身の弟子である橋を、ライバル社であったビクターのオーディションに連れて行きます。橋はこのオーディションに見事合格し、遠藤氏は彼を連れてビクター専属の作曲家であった吉田正のもとを訪れました。この出会いは、後に国民栄誉賞を受賞する二人の巨匠、遠藤実と吉田正の初めての顔合わせとなり、橋幸夫は吉田門下生として、「潮来笠」で華々しいレコードデビューを飾るに至りました。

橋幸夫と遠藤実の関係はその後も続き、長年にわたって数多くの楽曲で共演を果たしています。橋のデビュー30周年を記念する際には、恩師である吉田正、遠藤実の両氏と共に記念アルバムを制作し、記念シングルも発表するなど、師弟関係は非常に深いものでした。

本作「歌」が誕生したきっかけは、1998年に吉田正が逝去された後の出来事にあります。遠藤実氏から橋幸夫のもとへ一本の電話が入りました。それは、「吉田先生が夢枕に立たれ、『橋君のことをよろしく頼む』と託された」という内容でした。この遠藤氏から伝えられた吉田氏の言葉が、本楽曲制作の直接的な契機となったのです。このような経緯を経て、「歌」は作詞・作曲ともに遠藤実氏によって生み出されました。

遠藤氏は、この楽曲に関して橋に「橋君の人生には歌しかないだろう」と語ったとされています。この言葉、そして吉田正の遺志を託されたというエピソードから、「歌」は遠藤実氏が橋幸夫に贈った、事実上の遺作となった特別な作品として位置づけられています。

カップリング曲

シングルのカップリング曲には、「孤愁人・良寛」（こしゅうびと・りょうかん）が収録されています。この楽曲は鈴木紀代が作詞を手がけています。鈴木紀代はその後も橋幸夫の楽曲制作に関わっており、次作となるシングル「男ざかり（c/w 愛ことば）」でも作詞を担当しました。また、2016年にリリースされた橋幸夫の180枚目となるシングル「ちゃっきり茶太郎」の作詞も手がけるなど、長年にわたり橋幸夫の作品に貢献しています。

収録曲

1. 歌
作詞・作曲：遠藤実
編曲：馬飼野俊一
2. 孤愁人・良寛
作詞：鈴木紀代
作曲：遠藤実
編曲：馬飼野俊一
コーラス：荒川少年少女合唱団

主な収録アルバム

本作「歌」は、以下のアルバムに収録されています。

『橋幸夫が選んだ橋幸夫ベスト40曲』（2000年10月4日発売）
『橋幸夫全曲集』（1999年10月21日発売）

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