歓喜力行団

混乱をもたらすナチスの組織、歓喜力行団

歓喜力行団（かんきりっこうだん）は、ナチス党政権下のドイツにおいて、国民にさまざまな余暇活動を提供するために設立された組織です。その名称はドイツ語で「喜びを通じて力を」という意味を持ち、略称のKdFとしても知られています。この団体は、ロベルト・ライが指導するドイツ労働戦線（DAF）の下部組織として機能し、その主な目的はナチスの思想を広め、党への忠誠心を高めることでした。

活動内容

歓喜力行団は、「喜び」の享受を通じて国民の「力」を取り戻すことを目指していました。1933年から、リゾート地やクルーズ船での保養プログラム、音楽コンサート、さらには祝祭などを提供し、特に労働者階級に対して中産階級的なレジャーを開放しました。例として、バルト海のリューゲン島内に設けられた巨大な保養施設や、大型クルーズ船（KdF-Schiff）などがあります。また、ポルトガルのマデイラ島などの渡航先も人気を集めました。

その期間、約4500万件のパッケージツアーが販売され、歓喜力行団は当時、世界最大の旅行代理店とも評価されました。当初の目的は国民全体に様々な余暇活動を提供し、階級対立のない「民族共同体」の形成を目指すものでした。

社会的背景と目的

歓喜力行団の活動は、単なる国民へのサービスという側面を超え、ナチス政権の理想を広めるための重要な役割を果たしました。特に、「生の喜び」を基本にした余暇活動やスポーツ、文化の振興を通じて、ナチスが求める力強さや美しさの理念を市民に浸透させようとしました。また、幹部たちは戦争の勃発を予測し、労働者に休暇を提供することで経済的不満を抑えようとする「ガス抜き」の役割も持っていました。

しかしながら、戦況が悪化する中で、提供されていたサービスは徐々に縮小し、客船が病院船に転用される事態も発生しました。

車の販売と特別な貯蓄制度

さらに、歓喜力行団は労働者向けに「歓喜力行団の車」と称される手頃な価格の自動車を導入しました。これはヒトラーの国民車構想に基づき、フェルディナント・ポルシェによって設計されたもので、特別貯蓄制度を設けて車を購入できる仕組みが整えられました。しかし、第二次世界大戦の始まりにより、納車がほとんど行われることはありませんでした。

海外への影響

ナチスは1936年にハンブルクで開かれた「世界厚生会議」で、歓喜力行団の活動による生産性向上をアピールしました。また、日本でも1938年に歓喜力行団に模した「日本厚生協会」が設立されましたが、文化的背景の違いから、本来的な意図が十分に発揮されることはありませんでした。

組織構造と活動の拡大

歓喜力行団は、各地の工場や職場単位にまでその活動を拡大しました。1939年までに約7,000人の職員と135,000人のボランティアが活動に関与したとされます。

この団体は、様々な分野にわたる部局を持ち、スポーツや文化、旅行に関する担当部門が設けられていました。工場には常に歓喜力行団の委員が存在し、活動を支援していました。

最終的に、歓喜力行団は1939年に国際的に認められ、オリンピック・カップを受賞するに至りました。これは、その活動が如何に多くの国民に影響を与えたかを示すものです。現在も、歓喜力行団の活動を懐かしむ声が根強いことからも、当時の社会における彼らの役割を伺い知ることができます。

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