正木直彦

正木直彦について

正木直彦（まさき なおひこ、1862年12月17日 - 1940年3月2日）は、明治から昭和初期にかけて日本の美術界に顕著な影響を及ぼした美術行政家です。彼は文部官僚としての経歴を持ち、1901年から1932年まで東京美術学校（現在の東京藝術大学）の校長を務めました。通称は「十三松堂」で、特にその名は美術教育における彼の貢献を示しています。

経歴の概要

正木は1862年、大阪府堺市の和泉国堺夕栄町で生まれました。幼名は政吉でした。東京帝国大学法科大学を卒業後、彼は奈良県の尋常中学校長や帝国奈良博物館の学芸委員を経て、文部省に勤務しました。1899年には美術に関する調査のために欧米へ渡り、1901年に帰国し東京美術学校の校長に就任しました。

美術行政への貢献

正木が校長に就任した後、彼は美術振興に尽力しました。特に1906年、黒田清輝や大塚保治らと共に、政府による芸術振興を提案しました。この提案を受けて、翌年には文部省展覧会（文展）が開催されました。正木は文展の主事に任命され、他にも博覧会の開催や東京府美術館建設など、美術行政に関与しました。

彼は長期にわたり東京美術学校の校長として、そして工芸史の講義を行いながら、学校内部の異なる派閥との調停にも尽力しました。その統治力は高く評価されており、正木が校長職を辞任した1932年以降も、彼の影響は色濃く残り続けました。

美校改革運動と影響

在任中の1915年1月には、美術学校内で学生の長髪禁止など風紀の取り締まりが強化され、それに対して反発が生じ、美術学校改革運動が起こりました。正木に対する批判が媒体に掲載され、改革案が提起される中でも、彼は校長職にとどまりました。この動きは、彼にとって大きな試練でしたが、最終的には校内の安定を守る役割を果たしました。

最後の年と遺産

1940年3月2日に正木は逝去しました。彼の葬儀は東京美術学校の葬によって行われ、彼の墓石はシンプルながらも、深い意義を持っていました。特に、彼の長男である正木千冬は、ジャーナリストとして活躍し、鎌倉市の市長も務めました。

正木直彦は美術学校の改革者でありながら、優れた教育者でもあり、彼の功績は今なお評価されています。美術教育における彼の取り組みや、数多くの著作を通じて、後世にその年代の美術界を担った彼の影響は色あせることなく、今日に伝わっています。

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