正田昭

正田 昭の波乱万丈な人生

正田昭（しょうだ あきら、1929年4月19日 - 1969年12月9日）は、日本の歴史に名を刻んだ元死刑囚であり、小説家としても知られる人物です。彼の人生は、裕福な中流家庭に生まれ育ちながらも、数々の困難に直面し、最終的には悲劇的な結末を迎えました。

幼少期と家庭環境

正田は大阪府の裕福な家庭に生まれ、兄3人と姉2人の末っ子として育ちました。父親は弁護士でしたが、正田が生まれてから間もなく他界し、母親が教育に力を入れて彼を育てました。母親は知的である一方、金銭に対する執着が強く、そのため長兄との家庭内の摩擦が生じました。特に長兄は母の強い性格に反発し、家庭内暴力を引き起こしていました。

学生時代と挫折

正田は1947年に大阪府立住吉中学校を卒業した後、旧制高等学校の受験に失敗します。その後、慶應義塾大学経済学部予科に進学するも、彼の生活は交際相手の浮気を知ってから一変しました。彼は麻雀やダンスなどで浪費し、精神的に苦しむ中、自殺を考えるようにまでなりました。

社会人としての挫折

大学卒業後、日産自動車への就職が内定したものの、健康診断で肺の病気が判明し内定が取り消されました。そこで中堅証券会社に勤務を始めましたが、交際相手の叔母の資金を使い込んだことで、入社わずか2ヶ月で解雇されるという不幸に見舞われます。

犯罪と逮捕

1953年7月、正田はあまりにも深刻な経済状況に陥り、仲間と共にバー・メッカでの殺人事件を引き起こし、41万円を強奪します。事件後は逃亡生活を送りましたが、10月に京都で逮捕されました。当初は他の共犯者の名前を挙げていましたが、次第に自らの主犯としての責任を認めました。

獄中での再生

獄中生活を送る中で、正田はキリスト教に出会い、洗礼を受けます。この信仰は彼にとって支えとなり、模範囚としての生活を送りました。彼はまた、強力な霊的なつながりを持つことで、自らの生活を見つめ返し、自己再生を図ります。1963年には、獄中で執筆した小説「サハラの水」が新人賞の候補にもなりました。

最期と影響

1969年12月9日、正田は死刑執行を受けました。彼は死の前日にその知らせを受け、残された時間を家族や神父との面会、友人への手紙に費やしました。彼の生涯は、作家・精神科医である加賀乙彦に影響を与え、作品『宣告』のモデルとなりました。加賀は正田について、「彼からキリスト教を学んだ」と語っています。

著作とその後

正田は、数冊の著作を持ち、特に『黙想ノート』や『獄中日記・母への最後の手紙』が知られています。2019年に未発表の小説が発見され、今でもその作品は注目されています。正田昭の人生は、教訓的な側面も多く、彼の作品や生涯は今なお多くの人々に影響を与え続けています。

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