此岸

此岸（しがん）とは

此岸とは、仏教において彼岸と対比される世界であり、私たちが住んでいる現世、つまり「此の世（このよ）」を指します。

概要

仏教の民間信仰において、仏の世界は大きな川を隔てた向こう側、すなわち彼岸にあるとされています。これに対し、人間の住む世界を此岸と呼び、両者を区別します。人々は死後には彼岸へ行くことができると考えられており、彼岸では煩悩に煩わされることなく、永遠に平穏な生活を送ることができると信じられています。

対照的に、現世である此岸は、生きた人間であるゆえに煩悩に苦しめられ、日々の生活に追われる場所とされています。此岸に生きる私たちは、様々な欲求や執着、怒りや悲しみといった感情に翻弄され、苦しみや悩みから逃れることができません。そのため、彼岸への憧れが生まれると考えられます。

彼岸と此岸の距離は、暦によって変化すると考えられています。特に、毎年3月20日頃の「お彼岸」の時期は、彼岸と此岸の距離が最も縮まるとされ、この時期に先祖の供養を行うことで、より彼岸に近づけると考えられています。お彼岸には、お墓参りやお仏壇のお手入れ、精進料理を供えるなどの習慣があります。

此岸は、私たちが生きる現実世界であり、喜びや楽しみがある一方で、苦しみや悲しみも伴う世界です。しかし、仏教の教えでは、此岸での苦しみを通して、彼岸への悟りを開くことができるとされています。日々の生活の中で煩悩と向き合い、善行を積み重ねることで、より良い来世、ひいては悟りへと近づくことができると信じられています。

関連項目

他界：死後の世界のこと。
ヒガンバナ：お彼岸の時期に咲く花で、彼岸と此岸を結びつける象徴とされることがあります。

此岸を理解することは、仏教における死生観や人生観を深く理解することにつながります。私たちが生きるこの世界の意味を問い直し、より豊かな人生を送るための一助となるでしょう。

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