武功雑記

武功雑記の概要

『武功雑記』（ぶこうざっき）は、肥前平戸藩の第4代藩主である松浦鎮信（重信、天祥）が著した戦記で、元禄9年（1696年）頃に成立したと推測されます。原本は確認されていませんが、17巻にわたる写本が伝承されています。この著作は、戦国時代から元和年間にかけて活躍した武士やその武将たちの活動をまとめたもので、松浦鎮信が1663年から1696年にかけて聞き取った多くの逸話が記されています。

内容の特性

『武功雑記』には、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康など、日本の歴史に名を刻んだ大名や武将たちについての数多くの逸話が掲載されています。特に、関ヶ原の戦いや大坂の陣に関する記述が多く、当時の歴史を生き生きと伝えています。さらに、今川義元が「武将とは似つかわしくない」と容姿を批判されたエピソードや、武将の虚像について触れた記載も存在します。島津義久が独特な武器「樫木棒」を使用していたことや、明智光秀の過去についても興味深い情報として取り上げられています。

このような多様な逸話なり、体験に基づく話から成り立っており、信憑性の高い情報として評価されています。また、叙述はシンプルで修辞がほとんどなく、その背景には口承の記録であるため、聞き書きしたものが要点を押さえていることが伺えます。

浪人との関連

平戸藩では、大坂の役後に多数の浪人を抱えており、その数は200人を超えていたとも言われています。松浦鎮信は、これらの浪人たちから聞き取った話を基に『武功雑記』をまとめたため、当時の生々しい戦の様子や人物像が鮮明に描かれることになったのでしょう。特に、武芸に秀でた者たちの知恵や経験が独自の視点から綴られているため、読者にとって非常に魅力的な資料となっています。

書籍の発見と保存

明治時代に入ると、『武功雑記』はその価値を再評価されるようになり、漢学者であり『史籍集覧』の編纂者でもある近藤瓶城がこの著作に取り組みました。彼は著者の松浦鎮信を誤って三位法印の方と混同したことがありますが、実際にはその名を持つ曾孫が真の著者です。松浦家に伝わっていた写本の最後の巻には「元禄第九丙子寫春」という記載があり、このことから成立時期の根拠が得られています。

書誌情報

『武功雑記』は明治36年（1903年）に青山清吉から出版され、その後も国立国会図書館デジタルコレクションなどでアクセス可能です。近藤瓶城編による複数の巻も後に出版されており、これによりこの重要な歴史的資料は広く知られるようになりました。『武功雑記』は戦国時代の武士の姿を知るための貴重な手がかりを提供してくれる作品です。

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