武家名目抄

武家名目抄について

『武家名目抄』は江戸時代後期に編纂された重要な武家故実書です。全381冊から成るこの書物は、江戸幕府の命を受けた和学講学所によって作られ、武家の歴史や慣習に関する詳細な記述が含まれています。

編纂の背景

文化3年（1806年）、大学頭の林述斎は、和学講学所の塙保己一に対して、六国史以降から江戸幕府の成立にかけての歴史的記録の編纂を命じました。この命令に基づき、武家勃興期からの様々な職名や武具、文書などの記録が集められ、編纂作業が始まりました。

その後の2年間、江戸幕府は必要な経費として毎年50両を和学講学所に支給することを決定しました。この金銭的支援により、編纂作業は順調に進んだと考えられます。

編纂の困難と校訂

文政5年（1822年）には、武家故実に関する草稿18冊が提出されましたが、同年には保己一が病没してしまいます。実際には1821年にすでに逝去していました。このため、中山信名や松岡辰方といった他の研究者によって校訂が行われ、作業は続けられました。一時中断するものの、1860年頃にはようやく完成を迎えました。

構成と内容

『武家名目抄』は、武家の故実を16の部門に分けて整理しています。それぞれの部門では、例えば職名、称呼、居所、衣服、公事、文書、歳時、儀式、弓箭、甲冑、刀剣、旗幟、輿馬、術芸、軍陣、雑というテーマが扱われています。また、付録も存在し、全体として武家の生活と文化を包括的に把握することができるようになっています。

この書物は単に歴史的記録に留まらず、反映される文化や社会の背景を考証するための資料としても重要です。部門ごとに明確に整理された内容は、武家故実の研究において基本的な資料として後世まで重んじられました。

参考文献と関連情報

『武家名目抄』に関する主な書籍として、塙保己一編の『故実叢書 武家名目抄五』が挙げられます。この書籍は1903年6月に吉川弘文館から出版され、以降も多くの研究者によって引用されています。また、鈴木真弓や加藤秀幸の研究も、この書物に関する知識を深める上で重要です。

『武家名目抄』は、武家に関する正確な情報を後世に伝える重要な役割を果たしています。この書物を通じて、日本の武士道や武家社会の理解が深まることでしょう。

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