武家造

武家造（ぶけづくり）について

武家造は、鎌倉時代における武士の住宅スタイルを指します。この建築様式は、実用性を重視した簡素な構造が特徴であり、平安時代の貴族文化に対抗するために発展しました。しかし、武士自体が貴族出身であることから、実際には寝殿造を簡略化した形であり、独自の様式と見なすことは難しいとされています。建築史的には、これが一般的な見解となっています。

例えば、鎌倉将軍邸に関しては、『吾妻鏡』に記録が存在します。この記録を通じて、神殿や小御所、常御所、釣殿、侍所といった構成要素が確認されます。これらの空間は、寝殿造からの影響を受けつつも、武士に特有の空間構造が形成されていると考えられています。特に釣殿の存在は、池泉庭園が造られていた可能性を示唆しています。

当時の武士の住宅は、基本的には寝殿造の形式に基づいていましたが、彼らの生活様式は公家や殿上人とは異なり、独自の変化が加えられていたとされています。たとえば、鎌倉将軍邸の侍所は、非常に広大な空間であり、ここでは御家人たちが集まって儀式や宴を行う場所となっていました。このような場面では、将軍と御家人が対座することもあったと考えられています。

武家造の具体的な形態については、まだ完全には解明されていない点が多いものの、一般的には一棟あるいは棟続きの家屋があり、そのなかには武士の詰所や対面所、居間、小規模な客間などが配置されています。周囲には堅固な塀や堀がめぐらされており、また小さな庭空間も分化して鑑賞目的が強くなっていたとされています。この基本形態は、室町時代まで引き継がれました。

鎌倉時代末期になると、地域の武士の家屋が描かれた多くの絵巻物も製作され、これにより地方武士たちの生活が視覚的に伝えられました。有名な『男衾三郎絵詞』では、武蔵国の武士、男衾三郎とその兄・吉見二郎の住宅が描かれています。この絵画は、兄の吉見二郎の邸宅が非常に立派であったことを示しており、宮廷の女房を妻にもらい、優雅な生活を送っていた様子が描かれています。特に、広大な敷地の中には池や庭園が整備されており、紅梅や桜、松などが植えられていたことが伺えます。また、建物の設計は寝殿造に由来し、周囲には警備の者が待機している様子も見られます。

一方、弟の三郎の住宅は、兄の邸宅と同様に寝殿造風ではあったものの、庭の手入れがされておらず雑草が茂っていたり、池がないなど、生活様式の異なる点が描かれています。このような状況は、戦闘に特化した活動や客との接待が求められるため、従来の寝殿造では対応しきれない部分が多かったことを示しています。

また、義務教育の一環として「武家造」という言葉は教えられることがありましたが、その内容について混乱を招くケースも見られます。訪問者を迎える際に使用される武家屋敷の玄関や式台を、武家造と混同することがあるため、適切とは言えません。

これらのことから、武家造は鎌倉時代の武士の生活様式によく適応した形の住宅構造であり、貴族からの影響を受けつつも独自の発展を遂げたことが窺えます。

もう一度検索