武岡鶴代

武岡鶴代

武岡鶴代（たけおか つるよ、1895年9月18日 - 1966年9月30日）は、日本の声楽家（ソプラノ）であり、音楽教育者として多大な功績を残しました。彼女は、国立音楽大学の創立メンバーの一人としても知られています。

生い立ちと音楽への道

1895年、岡山県に生まれた武岡鶴代は、幼少の頃から音楽に親しみ、津山高等女学校を卒業後、東京音楽学校へと進みました。東京音楽学校では、ハンカ・ペツォルトとマルガレーテ・ネトケ＝レーヴェという著名な指導者に師事し、声楽家としての基礎を築きました。

1917年に東京音楽学校を卒業した彼女は、上真行奨励賞を受賞し、その才能を高く評価されました。その後も研究科で学びを深め、1919年には御前演奏会に出演するなど、着実にキャリアを積み重ねていきました。

声楽家としての活躍

1920年、武岡鶴代は南葵楽堂でバッハ＝グノーの『アヴェ・マリア』を演奏し、その美しい歌声で観客を魅了しました。また、日本初の四重唱団「澤崎クヮルテット」の創立メンバーとして、ソプラノを担当し、精力的に演奏活動を行いました。彼女の歌声は、ドラマチック・ソプラノとして多くの人々を魅了しました。

1924年には、山田耕筰指揮の日本交響楽団管弦楽演奏会に出演し、ワーグナーの『ローエングリン』詠唱や、R.シュトラウスの『薔薇の騎士』終幕の二重唱を披露するなど、オペラ歌手としても高い評価を得ました。また、西條八十の詩『海にて』に曲をつけ、作曲家としてもその才能を発揮しました。

教育者としての貢献

1926年、武岡鶴代は東京高等音楽学院の創立メンバーとして、後進の育成に力を注ぎました。声楽指導だけでなく、学院運営にも積極的に参加し、多くの優秀な音楽家を輩出しました。彼女の門下からは、西内静、友竹正則、田口興輔など、数多くの著名な音楽家が育ちました。また、1929年には文部省在外研究員としてドイツに留学し、テレーゼ・シュナーベルに師事しました。

戦中・戦後の活動

1935年には「鶴声会」を創立し、1936年には日本放送協会で『歌のうたい方』を放送するなど、音楽普及にも尽力しました。戦時中も演奏活動を続け、1944年には東京帝国大学出陣学徒壮行大音楽会で『第九』をソロで歌い上げました。戦後は、国立音楽学校、後の国立音楽大学の理事として、大学の発展に貢献しました。1954年には「武岡鶴代独唱会」を開催し、カムバックを果たしました。

晩年と遺産

1963年、最後の演奏会となる「武岡鶴代・属澄江演奏会」を開催。1966年には勲四等瑞宝章を受章しましたが、同年に71歳で生涯を閉じました。彼女の遺志を継ぎ、遺族からの寄付金を基に「武岡賞」が制定され、国立音楽大学の卒業生の中で、声楽と器楽の最も優秀な女子に贈られています。

著書と録音

武岡鶴代は、著書『新修コールユーブンゲン』を矢田部勁吉と共編するなど、教育分野でも貢献しました。また、SPレコードに多くの歌声を録音しており、その一部は現在も復刻盤で聴くことができます。

彼女の歌声は、多くの人々の心に残り、音楽界に多大な影響を与えた偉大な音楽家として、その功績は今もなお語り継がれています。

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