武田信照

武田信照（たけだ のぶてる）氏は、1938年（昭和13年）7月に長崎県佐世保市で生まれた日本の経済学者です。専門分野は経済学史で、特に株式会社の学説的な変遷や発展について主に研究を進めてきました。大阪市立大学で経済学を学び、同大学院経済学研究科の修士課程を修了し、経済学修士の学位を取得。その後、博士課程を単位取得満期退学しました。在学中には、福井孝治氏や飯田繁氏に師事し、研究者としての基礎を築きました。

1969年、武田氏は専任講師として愛知大学法経学部に着任しました。以来、40年間にわたり同大学で教育・研究活動に携わります。助教授、教授へと昇任し、大学内で要職を歴任しました。1989年には法経学部が法、経済、経営の3学部に分離・再編される際に、新設された経済学部の初代学部長に就任。この他にも、大学院経済学研究科長や理事など、様々な立場で大学運営に深く関わりました。

特に注目されるのは、1999年から2期8年間にわたって務めた愛知大学の学長および理事長としての手腕です。この期間、大学の教育・研究体制の充実に力を注ぎました。具体的には、2004年には法科大学院、2006年には会計大学院といった専門職大学院を設置するなど、時代の変化に対応した教育改革を推進。また、副学長制度の導入や、名古屋市東区にある車道校舎の再開発なども進めました。

学長在任中には、緊急事態への対応も求められました。2003年に中国でSARS（重症急性呼吸器症候群）が流行した際には、当時中国・天津市に留学していた現代中国学部の学生全員を帰国させるという、迅速かつ重要な判断を下しました。日本航空との交渉を経て、わずか3日間で総勢204名の学生を無事帰国させたこの対応は、多大な費用をいとわず学生の安全確保を最優先した行動として、高く評価されています。

2009年に定年を迎え、愛知大学を退職しました。その功績を称えられ、愛知大学名誉教授の称号を授与されています。また、2005年には中国の南開大学より名誉教授の称号が贈られており、国際的な学術交流への貢献もうかがえます。

学外においても、武田氏は様々な機関で理事などを務め、社会活動にも積極的に関わりました。日本私立大学連盟理事、霞山会理事、豊橋市国際交流協会理事などを歴任しています。

人物としては、「ねばり強く」を座右の銘とし、趣味は囲碁と山歩きを楽しむ一面も持っています。また、プロ野球選手として中日ドラゴンズで活躍した岩瀬仁紀氏が、武田氏のゼミで学んだ指導学生であったことでも知られています。

所属学会は、経済学史学会および経済理論学会です。研究成果は多くの著書にまとめられており、単著としては『価値形態と貨幣』、『株式会社像の転回』、『経済学の古典と現代』、『近代経済思想再考 経済学史点描』などがあります。共著も複数出版されており、経済学史分野における重要な研究者として、学界に貢献しました。

略歴をまとめると以下のようになります。

1938年7月 長崎県佐世保市に生まれる。
1961年3月 大阪市立大学経済学部卒業。
1965年3月 大阪市立大学大学院経済学研究科修士課程修了。
1969年3月 大阪市立大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。
1969年4月 愛知大学法経学部専任講師。
1973年4月 愛知大学法経学部助教授。
1985年4月 愛知大学法経学部教授。
1986年3月 経済学博士（大阪市立大学）。
1989年4月 愛知大学経済学部教授、経済学部長、理事。
1999年11月 愛知大学理事長・学長に就任。
2005年4月 南開大学名誉教授。
2007年11月 愛知大学理事長・学長を退任。
* 2009年4月 愛知大学を定年退職、名誉教授となる。

武田氏は、経済学史の研究者として、また大学運営者として、多大な功績を残しました。特に愛知大学においては、長期にわたりその発展に貢献し、教育体制の整備や国際交流の推進に尽力した人物です。

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