武者錬三

武者 錬三

日本の実業家。朝鮮における電気事業の黎明期から発展期にかけて重要な役割を果たした人物として知られる。京城電気（現在の韓国電力公社）の社長や朝鮮電気協会の副会長などの要職を務めた。出自は京都府の士族である。

生涯

武者錬三は、明治16年（1883年）1月7日、現在の兵庫県神戸市にあたる地で生を受けた。父は土木技術者の武者満歌である。

勉学においては、まず明治29年（1896年）に京都府尋常中学校（現在の京都府立洛北高等学校）を修了。その後、東京高等商業学校（現在の一橋大学）へと進学し、明治38年（1905年）に卒業を果たした。東京高等商業学校時代の同期には、後に三井物産の常務取締役となる田島繁二、実業家として活躍した内田信也、そして朝鮮で共に事業を手掛けることになる芳川寛治といった面々がいた。

大学卒業と同時に、彼は第一銀行へ入行する。程なくして釜山支店の副支配人という重責を担うことになり、朝鮮半島へと赴任した。

朝鮮に渡った武者は、将来有望な事業領域として電気事業に強い関心を抱く。親友であった芳川寛治らとともに、当時すでに実業界の重鎮であった渋沢栄一が後援する形で設立された日韓瓦斯株式会社の経営に参画した。しかし、明治30年代の朝鮮における電気やガスの利用はまだ一般的ではなく、需要が少なかったため、会社の業績は当初低迷した。

武者はこのような困難な状況下でも、会社の維持・発展のために精力的な努力を続けた。その熱意と奮闘が認められ、第一銀行からの援助を得ることに成功する。この支援を受けて、彼は当時外国人によって経営されていた京城（現在のソウル）の電燈会社を買収。これにより、現在の韓国電力公社の礎となる京城電気の設立と基盤確立に貢献した。

京城電気では、会計課長、総務課長といった要職を歴任した後、専務取締役に就任。組織の中核として会社の成長を支えた。そして、昭和17年（1942年）、遂に京城電気の代表取締役社長に就任するに至る。また、昭和14年（1939年）には朝鮮電気協会の副会長にも名を連ねており、朝鮮半島全体の電気事業の推進と発展に尽力したことがうかがえる。

京城電気を退任した後は、山口県徳山市（現在の周南市の一部）にて静かに隠棲生活を送ることを選んだ。しかし、第二次世界大戦末期の空襲により、その住まいを焼失してしまう。戦後、彼は千葉県柏市に新たな居住地を定め、そこで晩年を過ごした。昭和56年（1981年）1月13日、98歳という長寿を全うし、この世を去った。

人物・趣味

武者錬三はゴルフを趣味としていた。信仰していた宗教は日蓮宗である。

家族・親族

父の武者満歌（1848-1941）は土木技師であり、七尾鉄道会社建築課長や鹿島組顧問などを務めた経歴を持つ。

妹のキミ（1885年生）は京都府立第一高等女学校を卒業後、工業試験所技師で大阪帝国大学工学部講師を務めた松永六二に嫁いだ。キミの長女である常盤は、海軍軍人から実業家に転じた澤鑑之丞の次男、鍈男の妻となった。

最初の妻はスエ（1885年生）で、山口県士族小野カネの次女にあたる。後に妻となったシヅ（1896年生）は、奈良女子高等師範学校の卒業生である。

子女としては、以下の記録が残されている。

長男：慶之助（1915年生）。立教大学を卒業。
長女：ヨシ（淑子）（1911年生）。京城第一公立高等女学校を卒業。立石商店の創業者である立石良雄の長男で、旭タンカーの創業者である立石信吉に嫁いだ。信吉の長男である立石信義もまた、後に同社代表取締役社長を務めている。
次女：順子（1913年生）。満州中央銀行理事を務めた武安福男の長男で、間島省参事官や淺川組相談役を歴任した武安素彦の妻となった。
三女：和子（1921年生）。自由学園を卒業。

これらの情報からは、武者錬三が当時の経済界や主要な機関で活躍した人物たちと、婚姻関係を通じて広範な繋がりを持っていたことが見て取れる。

著書

『柏蔭余滴』（友邦協会、1959年1月）を著している。

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