武藤光朗

武藤光朗

武藤光朗（1914年3月17日 - 1998年7月25日）は、日本の社会評論家・社会思想家であり、経済学博士の学位を持っていました。彼は社会民主主義思想、とりわけカール・ヤスパースの哲学研究に尽力し、ヤスパース協会の創立者の一人としても知られています。

生涯

福島県に生まれた武藤は、幼少期に両親を亡くし、長崎で育ちました。長崎高等商業学校を経て東京商科大学（現一橋大学）を卒業後、横浜専門学校（現神奈川大学）教授、日本外政協会、日本国連協会の調査課長などを歴任。その後、國學院大學教授、中央大学教授、早稲田大学客員教授を務めました。また、社会主義インターナショナル・オスロ大会に日本代表として参加、民主社会主義研究会議（現・政策研究フォーラム）の議長・顧問、自由人権委員会委員長など、多岐にわたる社会活動にも携わりました。

思想と活動

武藤光朗は、カール・ヤスパースの著作翻訳を通して、実存哲学や経済哲学、社会哲学に関する多くの著作を発表しました。彼の思想の中核には、個人の魂の自由と尊厳を重視し、左翼・右翼を問わず全体主義を批判する姿勢がありました。言論誌『諸君!』への寄稿や、湾岸戦争に反対する文学者声明への批判など、積極的に社会へ発言しました。

死後

1998年7月25日、虚血性心不全により84歳で逝去。彼の蔵書は鎌倉女子大学に寄贈され、「武藤光朗文庫」として今も大切に保管されています。

著書

汎米経済圏の動向 (1945)
アメリカ経済の基本動向 (1947)
アメリカ資本主義の倫理 (1947)
マックス・ウエーバー その生涯と思想 (1948)
マルクス主義と実存哲学 (1948)
マックス・ウェーバーの人間像 (1949)
社会科学におけるプロレタリアと実存 マルクスとウェーバー (1950)
経済哲学 資本主義の限界の問題 (1950)
社会主義的自由への道 実存哲学的探求 (1952)
アメリカ資本主義の精神 (1953)
経済倫理 経済学と世界観 (1955)
社会主義と実存哲学 現代社会と自由の反抗 (1958)
現代日本の革命と反抗 (1962)
現代日本の精神状況 (1966)
経済学史の哲学 (1969)
経済倫理の実存的限界 (1971)
革命思想と実存哲学 (1973)
限界状況としての日本 (1975)
自由人権の運命 哲学的時論集 (1979)
例外者の社会思想 ヤスパース哲学への同時代的共感 (1983)
現代日本の挫折と超越 友愛哲学の探究 (1993)

共編著

社会主義の哲学 近代社会の平等化の論理 (1947)
福祉国家論 北欧三国を巡って (1965)
民主連合政権 その歴史の証言 (1973)
左翼全体主義 その理論と実態 (1974)

翻訳

近代経済学説史 (1957)
哲学的世界定位　哲学Ⅰ (1964)
根源的に問う 哲学対話集 (1970)

武藤光朗の業績は、社会思想、経済哲学、実存哲学など多岐にわたり、現代社会における自由と倫理の問題を考察する上で、重要な視点を提供し続けています。

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