武闘拳 猛虎激殺!

『武闘拳　猛虎激殺！』：和製ドラゴン、倉田保昭の東映初主演作

1976年、東映作品として公開された『武闘拳　猛虎激殺！』は、後の“和製ドラゴン”と呼ばれる倉田保昭の東映における初主演映画です。本作は、格闘技アクションと、本物のベンガル虎との迫力ある対決シーンが大きな見どころとなっています。

ストーリー：復讐の道と人喰い虎

主人公、竜崎鉄次はメキシコで厳しい武闘修行を積んだ後、日本へ帰国します。彼は、父と兄を殺害した敵への復讐を誓い、謎に包まれた奇巌城へと乗り込みます。城内には、強大な武闘集団が待ち構えており、鉄次はその数々を圧倒的な武力で打ち破っていきます。しかし、彼の前に立ちはだかるのは、人喰い虎として恐れられた獰猛なベンガル虎でした。壮絶な死闘の末、鉄次は虎を倒しますが、自身も負傷を負います。

キャスト：豪華な顔ぶれと実力派俳優陣

本作には、倉田保昭の他、多くの実力派俳優が脇を固めます。鉄次の弟子となる伊波良一役には清水健太郎、東洋武闘空手選手権チャンピオンの唐木誠役には矢吹二朗など、個性豊かなキャラクターたちが物語を彩ります。さらに、石橋雅史、堀田真三、深江章喜といったベテラン俳優陣も出演し、作品に重厚感を添えています。

製作：ブルース・リーの影と東映の戦略

本作の企画は、東映の岡田茂社長が、ブルース・リー主演映画『ドラゴンへの道』の配給権を獲得したことをきっかけに持ち上がりました。リーの遺作『死亡遊戯』の情報に触発され、塔を登りながら各階にいる敵と戦うというプロットを、東映独自の解釈で再構築したと言われています。最上階に待ち受ける敵は、黒人ではなく、本作ではベンガル虎という、東映らしい大胆なアレンジが施されています。

当初、この枠は志穂美悦子主演の『白バラ軍団』が予定されていましたが、最終的には『武闘拳　猛虎激殺！』が、『トラック野郎・望郷一番星』との二本立てでのお盆映画として公開されました。

キャスティング：香港スターの帰国と意外な経緯

当時、香港映画界で高い人気を誇っていた倉田保昭は、日本での知名度は低かったため、当初は千葉真一を主演に据えた企画でした。しかし、千葉真一が動物との共演を拒否したため、助演予定だった倉田保昭が主役の座を獲得することとなりました。倉田保昭は東映演技研修所の出身で、本作は彼の東映での凱旋初主演作となりました。

ベンガル虎：生きた人食い虎との撮影

本作の最大の見どころであるベンガル虎との対決シーンは、実際に人間を襲ったこともある獰猛なトラを用いて撮影されました。トラの名前はシーザーで、撮影中のトラブルや、スタッフがトラの凶暴さに恐怖する様子なども伝えられています。倉田保昭自身もトラとの格闘シーンで負傷しており、その危険な撮影の様子が、本作の伝説性を高めています。

撮影秘話：恐怖と侠気

撮影現場では、トラがなかなか動かず、生きた鶏を餌として与えるなど、様々な工夫が凝らされました。さらに、スタントマンがトラに襲われる可能性を考慮し、助監督が倉田の衣装を着て檻の中に入るなど、危険を顧みない撮影が行われました。しかし、倉田保昭自身の侠気ある行動により、スタントマンは檻の中に入る必要がなくなり、すべての撮影を倉田自身が行ったと伝えられています。

後世への影響とソフト化

本作は、東映の映画製作の方向転換にも影響を与えました。長らくソフト化されていませんでしたが、倉田保昭の映画出演100本目を記念して、2012年に初めてDVD化されました。

まとめ

『武闘拳　猛虎激殺！』は、倉田保昭のキャリアにおいて重要な作品であり、その迫力あるアクションシーンと、本物のベンガル虎との死闘は、今もなお多くのファンを魅了し続けています。東映の戦略、撮影秘話、そして俳優たちの熱演が織りなす、伝説的なアクション映画として、その存在感を示し続けています。

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