歩兵第49連隊

歩兵第49連隊

歩兵第49連隊は、大日本帝国陸軍の連隊の一つで、山梨県甲府市で編成されました。甲府連隊とも呼ばれ、その設立は甲府の街に大きな影響を与えました。

概要

日露戦争以前、日本の陸軍は近衛師団と全国12の師団で構成されていました。山梨県からの徴兵は、主に近衛師団や第1師団に配属されていました。日露戦争中に4個師団が増設され、そのうちの一つ、第13師団隷下として1905年（明治38年）に編成されたのが歩兵第49連隊です。当初は樺太やシベリアの攻略を目的としており、実際に樺太や朝鮮半島へ出動しました。しかし、1906年（明治39年）には北韓警備中に軍旗を紛失するという不祥事を起こし、後に再授与されています。

日露戦争終結後も陸軍の増強は続き、第18師団まで増設されました。既存の師団も再編され、1907年（明治40年）に第49連隊は第13師団から第1師団へ編入、甲府に連隊区が設置されることになります。この甲府連隊区は、山梨県だけでなく神奈川県藤沢市の一部も徴募区に含んでいました。

連隊誘致

歩兵第49連隊は3000人規模の兵団であり、当時の甲府市（人口約5万2700人）にとって、その経済効果は大きいものでした。地元住民にとっては、徴兵された兵士が遠方へ行かずに済むという利点もあり、連隊誘致の動きが活発化しました。また、地域に兵団が存在することは、県民や生徒児童に対する教育的効果も期待されていました。

1905年（明治38年）12月、甲府市会は陸軍大臣に兵団設置を請願することを議決し、誘致活動を開始しました。同様の動きは静岡県や茨城県でも見られましたが、山梨県では甲州財閥の若尾民造らが積極的に運動を推進しました。若尾は私有地の提供を申し出るなど、連隊誘致に大きく貢献しました。山梨県会も内務大臣に意見書を提出し、甲府が鉄道の要衝であり、山間部の要害の地であることを強調しました。

1907年（明治40年）には、政府が甲府への連隊設置に前向きであるものの、用地取得のための寄付を条件としていることが報道されました。若尾民造は10万坪（約33万平方メートル）の用地寄付を約束し、これにより甲府への兵営設置が正式に内定しました。

若尾は用地買収も行い、現在の甲府市緑が丘、北新、天神町付近に広大な土地を集積しました。そのうち半分が兵営と甲府衛戍病院（陸軍病院）に、残りの半分が練兵場として利用されることになりました。

1908年（明治41年）に兵営の建設が開始され、地元の建設業者によって工事が進められました。1909年（明治42年）に兵営工事が完了し、千葉県習志野市から移動してきた第49連隊が甲府に到着しました。この連隊の設置によって、甲府は軍都としての性格を強めていくことになります。

沿革

1905年（明治38年）3月 - 第13師団隷下として編成、樺太へ
1907年（明治40年） - 第1師団へ所属変更
1909年（明治42年）4月22日 - 神奈川県からの徴募兵が甲府に到着
1909年（明治42年）5月30日 - 韓国併合後の警備のため、第6中隊が出動
1936年（昭和11年） - 二・二六事件鎮圧のため東京へ出動、その後満州へ配置
1937年（昭和12年）6月19日 - 乾岔子島事件に参加
1944年（昭和19年）11月 - レイテ島で大部分が壊滅
1945年（昭和20年）8月 - 終戦に伴いセブ島で武装解除

遺構

旧糧秣庫が、山梨大学教育人間科学部の赤レンガ館として現存しています。これは、かつて甲府に存在した軍隊の歴史を今に伝える貴重な遺構となっています。

歩兵第49連隊は、その設立から終戦まで、日本の歴史の重要な局面に関わってきました。その足跡は、甲府の街並みや山梨大学の建物など、様々な形で今も残されています。

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