歯擦音

歯擦音（しさつおん）とは

歯擦音（英語: Sibilant）は、摩擦音の一種であり、発音時に舌を使って口腔内の気流を狭め、その気流を歯の裏などに当てることで、特有の強い噪音を生じさせる音を指します。この噪音は、他の摩擦音と比べてより顕著で、音響的な特徴となっています。重要な点として、すべての歯を使った摩擦音が歯擦音に分類されるわけではありません。例えば、[θ]や[ð]といった音は、歯を使って発音されますが、歯擦音の定義には当てはまりません。

英語の「sibilant」という言葉は、「シューという噪音を出す音」という意味合いを持ち、歯そのものの意味を含んでいない点も、注意が必要です。

スー音とシュー音

歯擦音は、その音響的な特徴から、大きく二つのグループに分類されることがあります。

スー音（hissing sound）: [s]や[z]のように、より高く、強く聞こえる歯擦音を指します。これらの音は、発音時に特に顕著な噪音を伴います。
シュー音（hushing sound）: [ʃ]、[ʒ]、[ʂ]、[ʐ]、[ɕ]、[ʑ]といった、スー音以外の歯擦音を指します。これらの音は、スー音に比べてやや柔らかく聞こえる傾向があります。

国際音声記号（IPA）による表記

国際音声記号（IPA）では、各歯擦音に対して以下の通り、固有の記号が割り当てられています。

[s] - 無声歯茎摩擦音：舌先を上の歯茎に近づけ、息を摩擦させて発音する無声音。
[z] - 有声歯茎摩擦音：[s]と同じ位置で発音する有声音。
[ʂ] - 無声そり舌摩擦音：舌先を反らせて発音する無声音。
[ʐ] - 有声そり舌摩擦音：[ʂ]と同じ位置で発音する有声音。
[ɕ] - 無声歯茎硬口蓋摩擦音：舌先を歯茎と硬口蓋の間で発音する無声音。
[ʑ] - 有声歯茎硬口蓋摩擦音：[ɕ]と同じ位置で発音する有声音。
[ʃ] - 無声後部歯茎摩擦音：舌先を歯茎より少し後ろに位置させて発音する無声音。
[ʒ] - 有声後部歯茎摩擦音：[ʃ]と同じ位置で発音する有声音。


これらの基本記号に加えて、補助記号を使用することで、さらに詳細な発音の違いを表現することが可能です。例えば、[s̪]と[z̪]は歯音、[s̺]と[z̺]は舌尖音として、発音の微妙なニュアンスを区別することができます。

まとめ

歯擦音は、音声学において重要な音の一種であり、その発生メカニズムや分類、記号表現を理解することで、言語の音響構造への理解が深まります。スー音とシュー音の違い、国際音声記号による正確な表記法は、言語学の研究や外国語学習において欠かせない知識となるでしょう。

もう一度検索