歴史言語学とは、
言語がどのように変遷してきたかを探求する
言語学の一分野です。この学問は、特定の時点で使用される
言語の状態を扱う共時
言語学に対して、
言語の時間的変化を重視する通時
言語学とも呼ばれます。
定義と特徴
歴史言語学は狭義には、特定の
言語の
過去の文献や口承データを素材として、その変化を明らかにすることを目指します。しかし、実際には文献に載っていない
歴史的な変化についても考察が行われ、より広い範囲の
過去の変化を推測することが一般的です。
言語学は元々比較
言語学から出発しましたが、「近代
言語学の父」と称されるフェルディナン・ド・ソシュールによって、共時
言語学と通時
言語学の概念が厳格に定義され、それぞれ別々の
研究分野として認識されるようになりました。しかし、実際には両者は単なる対立関係にはなく、共通の領域を持つことも多いのです。
言語の変化の要因
言語の進化に寄与する要因は主に内的要因と外的要因に分けられます。
内的要因
- - 誤用の定着: 言語の誤用が蓄積されて、新たな言語体系を形成することがあります。
- - 経済性: 話者が感じる「不要」や「エネルギーを要する」要素が言語から退化する一方、必要性を感じる要素が新たに加わることがあります。たとえば、日本語の唇音の退化は、このエネルギー感に起因していると考えられています。
- - 類推: 言語の中にある似たような変化に基づいて、別の部分にも変化が波及することがあります。英語の動詞や名詞の変化がその良い例です。
外的要因
言語接触も外的要因の一つです。異なる
言語同士が接触することで、発音や文法、語彙に新しい要素が取り入れられることがあります。これは基層理論(substratum theory)として知られています。
社会的な観点からの考察
言語の変化は、社会的な要因によっても影響を受けることがあります。共時的に記録されるデータの中にも、世代間の差異や社会
方言など、
言語の変化を示唆する要素が見られます。また、社会における
言語に対する規範意識も、
歴史的な文脈を抜きにしては語れません。
言語が長期間にわたって特定の方向に変化していく現象は、エドワード・サピアによって「駆流(drift)」と名付けられています。
おわりに
歴史言語学は、
言語の変遷を深く理解するための重要な分野です。
言語がどのように変わり、またそれを導く要因について学ぶことは、文化や
歴史を理解するうえでも欠かせない要素となっています。