死刑にいたる病

死刑にいたる病

『死刑にいたる病』（しけいにいたるやまい）は、櫛木理宇による長編サスペンス小説で、2015年に刊行された『チェインドッグ』を改題した作品です。2017年にハヤカワ文庫JAから文庫化されました。

物語の概要

東京の二流大学に通う筧井雅也は、内向的で控えめな性格の持ち主です。教育者の家庭に生まれながら、有名大学への受験に失敗した彼は、両親からの期待とプレッシャーを強く感じていました。そんな日々の中、彼にとってかけがえのない思い出となっているのは、通学途中で訪れたベーカリーの店主、榛村大和との温かい会話です。ところが、彼が心を寄せていたその榛村は、実は残虐な連続殺人犯であり、24人の高校生を殺した罪で死刑判決を受けた男でした。

榛村から手紙が届き、雅也は拘置所で面会することになります。そこで榛村は、自身の罪を認めつつも、最後の一件だけは冤罪だと主張し、雅也に調査を依頼します。雅也は担当弁護士の事務所で資料に目を通し、榛村の犯行の中で唯一、他の被害者とは異なる年齢や状況の被害者・根津かおるの事件に疑問を感じます。調査が進むにつれて、榛村が過去に受けた虐待や、同じ養子縁組に関わる女性との繋がりが明らかになり、榛村と雅也の間には unexpectedな関係が浮かび上がります。

自らの身分や家族についての疑念が湧き上がる中、雅也は榛村による精神的な支配を感じ取るようになります。間もなくして、彼は自らの友人である加納灯里との交際を始める一方、榛村の影響から逃れられない自分に葛藤します。そして、根津かおるの事件の証人であった金山一輝と出会う中で、さらなる事件が展開します。

金山は、榛村の友人として精神的に依存する関係にあり、事実関係を把握しつつも、自身の苦しみを抱えていました。雅也との出会いの中で彼が言った「僕が殺した」という言葉は、物語の行く末に大きな影響を与えます。

物語のクライマックスで、雅也は榛村との面会時に推理を語ります。榛村は、雅也に対して自らの過去を話し、彼を精神的に支配していたことを明かします。雅也は次第に、自分自身も榛村の意のままに動かされていたことに気づき、彼との関係に終止符を打つことを決意します。

登場人物

• - 榛村大和：連続殺人犯であり、周囲に恐怖を与える存在。かつてはベーカリーを経営していた。
• - 筧井雅也：内向的な大学生で、榛村からの手紙によって自らの運命が大きく変わる。
• - 金山一輝：榛村の友人であり、証人として事件に深く関わる。
• - 加納灯里：雅也の恋人で、物語全体における重要なキャラクター。

書誌情報と映画

本作は、2017年10月にハヤカワ文庫JAから発売され、映画化もされています。2022年には、阿部サダヲと岡田健史が主演し、公開後に大ヒットを記録しました。

この作品を通じて、因果や心理の深層が描かれる中、読者を惹きつけ、引き込むサスペンスの魅力が感じられます。物語は巧みなプロットと衝撃的な展開で、最後まで目が離せないものとなっています。

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