殺人鬼 (横溝正史)

殺人鬼

『殺人鬼』は、横溝正史による短編推理小説で「金田一耕助シリーズ」の一作として知られています。本作は1947年12月から1948年2月にかけ、雑誌『りべらる』で発表されました。現在は、角川文庫や春陽文庫に収録され、多くの読者に親しまれています。

概要

ストーリーは、ある夜遅くまで会議に出席していた推理作家の八代竜介が、道すがら美しい女性・加奈子と出会うところから始まります。彼女は最近周辺で発生した連続殺人事件の影響で不安を抱えており、八代が自宅まで送り届けることになります。この時、加奈子は知らず知らずのうちに命を狙う存在に付きまとわれていることを知ります。

あらすじ

連続殺人鬼の恐怖が町を覆う中、八代は加奈子を家まで送ることにしますが、彼女はかつての夫、亀井淳吉に付きまとわれていると言います。加奈子は亀井が復員後、彼女の新しい恋人である賀川達哉を襲撃し、これがさらなる悲劇を引き起こすきっかけとなります。

亀井は片目が義眼で片足が義足という身体でありながら、その存在は加奈子にとって恐怖の象徴となるのです。数日後、八代は賀川達哉の死亡現場にたどり着き、加奈子が助けを求めてきた矢先、彼女も危険な目に遭遇します。

その場から逃げ去った義足の男を追う八代ですが、亀井とのつながりを解明することができず、次第に事態は混迷を極めます。八代と加奈子は、義足の男が本当に亀井なのか、そして新たに亡くなった梅子の死が持つ意味について、深く考察を迫られることになります。

登場人物

• - 金田一耕助（きんだいち こうすけ）: 私立探偵として事件を解決する役回り。
• - 八代竜介（やしろりゅうすけ）: 主人公であり、探偵作家。
• - 亀井加奈子（かめい かなこ）: 美しく内面に影を持つ女性。
• - 亀井淳吉（かめい じゅんきち）: 加奈子の元夫、義足。
• - 賀川達哉（かがわ たつや）: 加奈子と恋仲にある男。
• - 賀川梅子（かがわ うめこ）: 達哉の妻で、事件に影を落とす人物。

この作品では、人間の内面的な葛藤と愛憎劇が重なり合い、謎が深まる中で真実を追い求める様子が描かれています。

テレビドラマ

『殺人鬼』は1988年と2016年にテレビドラマとしても放映され、それぞれ異なる角度からストーリーが再現されています。1988年版では八代が登場せず、金田一耕助の役割がより強調されています。また、2016年版では原作に忠実な脚本が評価されました。

このように『殺人鬼』は、ミステリーとしてだけでなく、人間関係の複雑さと感情の深さを描いた作品として、長らく多くの読者・視聴者に愛されてきました。

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