母たちの村

アフリカの村に生きる女性たちの、伝統と抵抗の物語

『母たちの村』(原題：Moolaadé)は、セネガル、ブルキナファソ、モロッコ、チュニジア、カメルーン、フランス合作で制作された2004年の映画です。舞台はアフリカのある村。古くから続く伝統儀式である女子割礼から逃れた少女たちが、一人の女性の庇護を求めることから物語は始まります。

主人公コレは、かつて自身の娘アムサトゥの割礼を拒否した経験を持つ女性です。6人の少女たちがコレのもとに「モーラーデ（保護）」を求めやってきます。コレは自らの住居に縄を張り巡らせ、少女たちを外部から守る「モーラーデ」を始めます。

この行為は村の伝統を乱すものとして、割礼の執行者たちから強い反発を受けます。彼らはコレに少女たちを引き渡すよう迫りますが、コレは譲りません。村の長老もコレの行動を非難しますが、同時に「モーラーデ」を破ることで招かれる災いを恐れています。

そこで長老たちは、コレの夫シレを利用しようとします。伝統的な権力構造の中で、夫は妻に対して絶対的な力を持つからです。彼らはシレに働きかけ、コレに「モーラーデ」をやめさせ、少女たちを割礼に処させようと画策します。

一方、アムサトゥの婚約者で、村の長老の息子でもあるイブラヒマがフランスから帰国します。イブラヒマは村人から歓迎されますが、その裏で、割礼を逃れた少女のうち2人が自殺したという事実が発覚します。

この出来事をきっかけに、村の男性たちは、女性たちが所有するラジオを取り上げ、コレを自殺の原因だと非難します。ラジオは、割礼に対する否定的な意見を流していたため、男性たちの怒りを買ったのです。娯楽を奪われた女性たちは、次第に団結を始めます。

イブラヒマは、ラジオの没収や、アムサトゥとの結婚に反対する長老たちの言動に疑問を感じながらも、明確に反論することはできません。コレは夫シレから「モーラーデ」をやめるよう説得されますが、彼女の意志は揺るぎません。

シレの兄は、シレに鞭を与え、コレに屈服させるよう強要します。シレは苦悩しながらも、コレを広場に引きずり出し、鞭打ちを始めます。しかしコレは抵抗し続け、そこに通りかかった元軍人が止めに入ります。鞭打ちはそこで止まりますが、元軍人はその後、処刑されてしまいます。

さらに、鞭打たれる最中に保護されていた少女ジャトゥは、母親に連れ去られ、割礼を受けて命を落としてしまいます。翌日、広場では没収されたラジオが焼かれます。そこに集まった女性たちは、割礼執行者たちにナイフを捨てさせ、二度と割礼を行わないよう宣言します。

長老たちはコレを罵倒しますが、シレとイブラヒマは女性たちの宣言を支持します。この映画は、伝統と女性の権利、そして母と娘の愛の葛藤を描いた、力強い物語です。女子割礼という残酷な慣習に抵抗する女性たちの姿を通して、アフリカの文化と社会問題を深く考えさせられる作品となっています。

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