母谷山

母谷山（もやさん）は、秋田県八峰町に位置する標高276mの山です。目名潟地区のすぐ北東に位置することから、「目名潟山」とも呼ばれています。

概要

母谷山は、旧峰浜村と旧八森町の境界に位置し、山頂からは雄大な景色を一望できます。標高100m地点には緑地休養施設があり、駐車場、トイレ、水飲み場が整備されているため、気軽に訪れることができます。そこから鳥居をくぐると登山道が始まり、最初は緩やかな道が続きますが、徐々に急勾配となり、約20分で山頂に到着します。

山頂からは、世界遺産の白神山地の県境、男鹿半島へと続く海岸線、広大な八郎潟、そして雄大に流れる米代川を一望できます。天候に恵まれれば、鳥海山をはじめとする秋田県内の名峰を望むことも可能です。四季折々の自然が織りなす美しい景色は、訪れる人々を魅了します。

歴史

山のふもとには、戦国時代の館跡とされる「蝦夷館遺跡」があります。1964年に県の文化財専門委員によって発掘調査が行われ、広い台地上に構築された館の構造が明らかになりました。この遺跡からは、当時の土豪が海上交易に関わっていたことを示唆する舶来品の中国古陶の遺物も発見されています。伝説によると、蝦夷館は安倍氏が室町時代に居館としていましたが、後に檜山安東氏との争いに敗れたと伝えられています。見晴らしの良いこの場所は、海上交通を監視するのに適しており、蝦夷館が建てられた理由の一つと考えられています。

地域との関わり

母谷山は、地域の人々にとって身近な存在です。2016年3月に閉校した八峰町水沢小学校の校歌には、母谷山が歌われており、毎年5月には水沢小学校の生徒による母谷山登山が行われていました。水沢小学校の閉校後、その伝統は後継の峰浜小学校に引き継がれ、現在も学校登山が実施されています。また、かつては能代北高等学校でも母谷山への学校登山が行われていました。

山頂

母谷山の山頂には、ブロック造りの太平山を祀る神社があります。山頂一帯は広い草地となっており、遮るものがなく、360度のパノラマが広がります。神社の東側の草地には三角点が設置されています。

周辺の山

母谷山のすぐ北には、母谷山よりもやや高い薬師山があります。八森町から眺めると、大小2つのこんもりとした山が並んで見えるのが特徴的です。薬師山は、かつて「大母爺杜（おおもやもり）」と呼ばれていました。

名前

母谷山の名前の由来は、米代川を挟んで南方に位置する茂谷山と同様に、アイヌ語に由来すると考えられています。江戸時代の紀行家、菅江真澄は著書『霞む月星』の中で、「もや」とは丘ではなく、高くそびえる山を指す言葉であると述べています。また、「靄」という言葉が雲、霞、霧、微雨などを包括する方言であったとし、松前や津軽にも「もや」という地名が存在すること、そして八峰町の母谷山もその一つであることを指摘しています。

参考文献

* 菅江真澄『霞む月星』

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