毒もみ

毒もみとは

毒もみ（どくもみ）とは、かつて日本各地で行われていた伝統的な漁法の一つです。これは、川や海などの水域に有毒な物質を流し込み、魚を麻痺させて捕獲するという方法です。地域によっては「毒流し（アメながし）」や「根流し」などとも呼ばれていました。

毒もみの歴史

毒もみの歴史は古く、狩猟採集社会において食料を得る手段として用いられていました。紀元前4世紀には魚毒漁が行われていた記録も残っています。世界各地で様々な有毒植物が利用され、日本では主に山椒が使われていました。山椒の皮に含まれるサンショオールには麻痺作用があり、これを川の中で揉み出すことから「毒もみ」と呼ばれるようになりました。

神聖ローマ帝国のフリードリヒ2世が1212年に毒もみを禁止する法令を出すなど、ヨーロッパ諸国でも同様の法律が存在していました。アメリカ先住民族のタラフマラ族も毒を用いた漁を行っていたことが知られています。

毒もみの方法

毒もみには、主に以下の手順で行われていました。

1. 山椒の皮を剥いで乾燥させ、臼で搗き砕く。
2. 砕いた粉末と木灰を混ぜ合わせる。
3. 混合物を袋に入れ、川や池などの水中で揉み解す。
4. 水中に有毒成分が流れ出し、魚が麻痺して浮き上がる。

植物性の毒は、魚を一時的に麻痺させる程度の弱いものが多く、渇水期に小規模な沢で行われることが一般的でした。

現代における毒もみ

日本では、1951年に施行された水産資源保護法により、調査研究目的以外での毒もみは禁止されています。しかし、東南アジアなど一部の地域では、現在でもシアン化合物などを用いた漁が行われており、環境破壊が深刻な問題となっています。特に、サンゴ礁への影響が大きく、生態系の破壊につながっています。

毒もみが登場する作品

毒もみは、文学作品にも登場します。

宮沢賢治の童話『毒もみのすきな署長さん』
宮沢賢治の童話『風の又三郎』（少年らが毒もみを試みる描写）
* 南会津地方の民話『イワナの怪』（岩魚坊主のバリエーションの一つ）

まとめ

毒もみは、かつて世界中で行われていた漁法ですが、環境への負荷や生態系への影響から、現代では多くの国で禁止されています。しかし、一部地域では依然として行われており、環境問題として深刻な課題となっています。持続可能な漁業の実現のためには、毒もみに頼らない新たな漁法の開発や、環境保護への意識向上が不可欠です。

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