比婆牛

比婆牛とは

比婆牛（ひばぎゅう）は、広島県庄原市で生産されている黒毛和種のブランド牛です。その肉は、鮮やかな紅色と繊細な霜降りが特徴で、口に含むととろけるような柔らかさと、深いコク、そして上品な香りが広がります。また、不飽和脂肪酸の割合が高いため、口どけが良く、後味がさっぱりとしているのも特徴です。

比婆牛の特徴

比婆牛の肉の特徴は、その美しい霜降りと、とろけるような柔らかさ、そして上品な香りです。これは、比婆牛が持つ遺伝的な特徴と、庄原市の豊かな自然環境によって育まれたものです。比婆牛は、不飽和脂肪酸の割合が高いため、口どけが良く、後味がさっぱりとしているのも特徴です。また、比婆牛は、繁殖・産子共に良好で、性格もおとなしく飼いやすいため、生産者からも愛されています。

比婆牛の歴史

比婆牛のルーツは、日本在来の和牛である「岩倉蔓」に遡ります。岩倉蔓は、1843年に比婆郡で誕生し、その優秀な血統は、後の比婆牛へと受け継がれました。比婆牛は、かつては神石牛と共に広島県を代表する和牛として全国に名を轟かせていましたが、一時期ブランドが消滅したこともありました。しかし、近年、地域ブランドとしての価値が見直され、復活を果たしています。

比婆牛の定義

比婆牛は、庄原市が定める認証制度によって、以下の通り定義されています。

庄原市産の素牛であること。
県内で飼育された血統牛であること。

比婆牛の沿革

比婆牛の産地である庄原市は、中国山地に位置し、夏は涼しく、降水量が多いという特徴があります。この気候は、良質な牧草を育み、牛にとって快適な環境を提供します。古くは、この地の牛は農耕や運搬に用いられていましたが、たたら製鉄が盛んになると、鉄や製鉄用燃料の運搬にも用いられるようになりました。また、より良質な種を生み出すため、交配による品種改良が行われ、その結果、優秀な系統が「蔓」と呼ばれるようになりました。

岩倉蔓

比婆牛のルーツである「岩倉蔓」は、1843年に岩倉六右衛門によって育種されたものです。岩倉蔓は、その優秀な血統から、全国の和牛のルーツの一つとされています。また、明治時代には、岩倉蔓に加えて、有実蔓などの優れた蔓牛が誕生しています。

あづま蔓

昭和に入り、岩倉・有実の両蔓の雄系をたどると、1918年誕生の種雄牛「第10野田屋」号に収束することがわかりました。それを元に1948年、あづま蔓造成組合が発足し、近代的な集団育種事業が行われるようになりました。1952年には、あづま蔓牛組合が国内初の公認蔓牛組合として全国和牛登録協会に認定されています。

ブランドの消滅と復活

高度経済成長以降、農村部での離農が進み、牛肉の輸入自由化も迫る中、比婆牛の生産は衰退していきました。1986年には、広島県が県統一ブランド「広島牛」を構築したことで、比婆牛ブランドは国内流通市場から消滅しました。
しかし、2000年代に入り、和牛地域ブランドの価値が見直されるようになり、2014年には、生産者・庄原市・JA庄原など関係機関が「あづま蔓振興会」を設立。比婆牛ブランドの新たな認証制度を構築し、広報および販売に取り組んでいます。

比婆牛の文化

口和モーモー祭り

庄原市口和町では、比婆牛の共進会での好成績を記念して、1988年から隔年で「口和モーモー祭り」が開催されています。祭りでは、牛に絡んだ様々なイベントや、牛肉の販売、焼肉コーナーなどが設けられ、多くの人々で賑わいます。

大仙信仰と牛供養

庄原市域には、大山信仰と牛供養に関わる文化が残っています。各地区ごとに大仙神社（大山神社）が勧請され、定期的に大仙祭りが開催されています。また、大仙祭りとは別に、牛馬供養田楽も行われており、そのいくつかは無形民俗文化財に指定されています。

塩原の大山供養田植（国指定）
比和牛供養田植（県指定）
牛供養『花田植』（市指定）
八鳥牛供養花田植（市指定）

まとめ

比婆牛は、その美しい霜降りと、とろけるような柔らかさ、そして上品な香りから、多くの人々を魅了しています。その歴史と文化は、庄原市の豊かな自然と人々の努力によって育まれてきました。比婆牛は、これからも庄原市の宝として、その美味しさを多くの人に届けていくことでしょう。

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