比推力

比推力とは

比推力（ひすいりょく、specific impulse、Isp）は、ロケットエンジンやジェットエンジンにおいて、推進剤の効率を示す尺度です。具体的には、単位時間あたりに消費する推進剤の質量に対して、どれだけの推力を生み出せるかを表します。

定義

比推力は、以下の式で定義されます。


比推力 = 推力 / (推進剤質量流量 × 重力加速度)


単位は「秒」で表されます。物理的には、「噴射速度を重力加速度で割ったもの」と解釈でき、ノズルの適正膨張を仮定した場合、この解釈が成り立ちます。

比推力の意味

比推力は、以下の2つの意味で捉えることができます。

1. 単位質量の推進剤で、単位推力を維持できる秒数
例えば、地球上で1トンの推進剤を噴射し、1トンの物体を空中で支え続けることができる秒数を示します。
2. 1秒間に噴射する推進剤の質量の何倍の質量を空中でホバリングさせられるか
ロケットの質量は考慮せず、推進剤のみに着目した指標です。

比推力と噴射速度

比推力は、噴射速度と密接な関係があります。噴射速度が速いほど、少ない推進剤で大きな推力を得ることができ、比推力は向上します。これは、ある種の「燃費」のような指標として捉えることができます。

比推力の重要性

比推力は、推進器の性能を評価する上で重要な指標です。しかし、推進器や燃料タンクの質量は考慮されていないため、推進剤効率以外の性能や経済性を示すものではないことに注意が必要です。推進器の総合的な性能を評価するには、比推力だけでなく、推力重量比、信頼性、安全性、製造コストなどを考慮する必要があります。

有効排気速度

比推力と重力加速度を掛け合わせることで、有効排気速度を求めることができます。


有効排気速度 = 重力加速度 × 比推力


有効排気速度は、推進剤が噴射される際の速度を表し、推進効率を測る上で重要な指標となります。

宇宙船の出力

推力と比推力を掛け合わせることで、宇宙船の出力を求めることができます。


宇宙船の出力 = 推力 × 比推力

推進エンジンの動作原理ごとの比推力

推進エンジンの動作原理によって、比推力の値は大きく異なります。以下に、主な推進エンジンの比推力のおおよその値を示します。

固体燃料ロケット：200–300秒
液体燃料ロケット：300–460秒
ラムジェットエンジン：500–1500秒
ターボジェットエンジン：2300–2900秒
レシプロエンジン：3500–5500秒
原子力ロケット：最大1000秒（推定）
電気推進：数千秒–1万秒（推定）
核融合推進：数万秒（推定）

まとめ

比推力は、ロケットエンジンやジェットエンジンの性能を評価する上で重要な指標です。推進剤の消費効率を測る上で、比推力の理解は不可欠です。ただし、比推力だけでなく、推進器全体の性能を総合的に判断することが重要です。

関連項目

* ツィオルコフスキーの公式

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