毛主席紀念堂

北京の天安門広場の中央に位置する毛主席紀念堂は、中華人民共和国建国の指導者、毛沢東の遺体が永久保存されている施設です。毛沢東の死去を受けて建設が決定され、1976年11月に着工、1977年9月9日に完成しました。正面に掲げられた「毛主席紀念堂」の文字は、当時の国家指導者であった華国鋒の手によるものです。この紀念堂は、広場周辺の人民英雄紀念碑などの建築物群とともに、2024年7月、「北京中軸線：中華の理想的秩序を示す建造物群」の一部としてユネスコ世界遺産に登録され、その歴史的な重要性が改めて示されました。

紀念堂の見学は、まず北側の入口から入る「北大庁」から始まります。この広間には、美しい風景画を背景に大理石製の毛沢東の大きな座像が安置されており、訪問者はここで献花を捧げることができます。続いて進む核心部分である「瞻仰庁」は、最も重要な空間です。ここには、特殊な防腐処理が施された毛沢東の遺体が、透き通った水晶の棺に納められ、安置されています。遺体は、胸から下を中国共産党の赤い旗で覆われています。瞻仰庁の白い大理石の壁には、「偉大な領袖にして偉大な導師である毛沢東主席は永遠に朽ちない」という意味の銘文が金文字で力強く刻まれています。館内には多くの警備員が配置されており、厳粛な雰囲気を保つため、立ち止まって遺体を長時間見つめることは禁じられ、静かに棺の前を通り過ぎるように促されます。瞻仰庁の先の「南大庁」は、対照的に毛沢東関連の記念品や土産物を扱う売店となっています。一般の見学者は通常この南大庁から退出しますが、紀念堂の2階には、毛沢東を含む革命指導者たちの業績を紹介する展示室などがあり、限られた要人や特定の団体のみが見学を許可されています。

紀念堂の見学に際しては、いくつかの重要な規則があります。まず、入館時には有効なパスポートなどの身分証明書の提示が必要です。また、連日非常に多くの訪問者があるため、特に朝一番は中国各地からの団体客が多く、長い行列ができ、入館まで長時間並ぶことが一般的です。貴重品以外の荷物、特にカメラの持ち込みは厳禁とされています。手荷物は、行列に並ぶ前に必ず指定の有料預かり所に預ける必要があります。この預かり所は天安門広場の敷地外、道路を挟んだ東側の建物に位置しているため、事前に場所を確認しておくと安心です。もし荷物を持ったまま検査で発見された場合、預かり所に預けに行ってから再度列の最後尾から並び直しとなります。入館前には、金属探知機による厳重なボディーチェックが行われます。

紀念堂の一般的な開館時間は、午前が8時30分から11時30分までです。火曜日と木曜日のみ、午後1時30分から4時まで追加で開館します。ただし、夏季の7月と8月は午前のみの開館となり、毎週月曜日は休館日です。しかし、政治的な行事や国賓の訪問などにより、事前の告知なく突然休館になることが多々あります。また、混雑状況によっては開館時間が早まったり、入場列の受付が早めに終了したりすることもあるため、訪問当日の現地での確認が不可欠です。

紀念堂自体への入場は無料です。しかし、前述の通り、手荷物の預かりは有料サービスとなります。また、館内で販売されるパンフレットや献花用の花も有料ですが、これらはいずれも比較的安価な価格で提供されています。

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