毛利広房

毛利広房（もうり ひろふさ）は、南北朝時代に安芸国（現在の広島県西部）で勢力を誇った国人領主であり、毛利氏の当主として知られています。彼の生涯は、当時の社会情勢を反映したものであり、短いながらも重要な役割を果たしました。

広房は、天授7年/弘和元年（1381年）に、父である毛利元春（もり もとはる）から吉田荘（よしだそう）の地頭職の半分を譲り受けました。この時、広房は毛利家の家督を相続したと考えられています。地頭職の継承は、単なる財産の移転ではなく、その地域の支配権と責任を引き継ぐことを意味していました。

家督を継承後、広房は南朝：元中2年/北朝：至徳2年（1385年）に出陣先の西条（さいじょう）で討ち死にしました。戦国時代のような華々しい活躍こそありませんでしたが、当時の地方領主は常に戦乱に巻き込まれる危険と隣り合わせであり、広房もその例外ではありませんでした。彼の死は、毛利氏にとって大きな損失であり、今後の家の方針に影響を与える出来事でした。

広房の死には、悲しい後日談があります。広房が亡くなった時、彼の妻は妊娠していました。その後、妻は男児を出産し、その子は後に毛利光房（もうり みつふさ）と名乗って家督を継ぐことになります。しかし、光房が幼少であったため、祖父である元春が後見人となり、光房が成人するまで毛利氏を支えました。この期間、元春は経験と知略をもって毛利氏をまとめ、光房が家督を継ぐための基盤を築きました。

毛利広房の生涯は、南北朝時代の地方領主の典型的なものであり、戦乱の中で生き抜き、家を守るために尽力した姿を今に伝えています。彼の死後、遺児が家督を継ぐまでの間、祖父が後見人として支えたという事実は、毛利氏の結束の強さを示すエピソードとして語り継がれています。

参考文献
* 時山弥八編『国立国会図書館デジタルコレクション 稿本もりのしげり』1916年。

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