民族解放軍 (コロンビア)

民族解放軍（ELN）

民族解放軍（Ejército de Liberación Nacional、略称ELN）は、コロンビア国内で活動する反政府の極左武装組織です。マルクス・レーニン主義に基づき、親キューバの立場を掲げながらアメリカに対抗する姿勢を持っています。その構成員は主に都市部の知識人や中間層から成り立っています。

設立背景と活動の始まり

民族解放軍は、1963年にキューバ革命の影響を受けた大学生たちによって設立されました。彼らはキューバで訓練を受け、「ホセ・アントニオ・ガラン解放旅団」という部隊を形成しました。翌年には正式に民族解放軍として改組され、その活動を開始しました。ELNは、直接的な攻撃よりも石油産業への攻撃を通じて、政府に対する間接的な打撃を狙いました。特にカリブ海に石油を送るパイプラインをターゲットにした破壊活動が目立ちました。

勢力の増大とその後

一時期、ELNは約5,000人から6,000人の戦闘員を抱え、コロンビア国内における反政府勢力ではコロンビア革命軍（FARC）に次ぐ規模に成長しました。しかし、冷戦の終結や2000年代以降のコロンビア政府軍の巻き返し、コロンビア自警軍連合による攻撃によって、ELNの勢力は次第に減少しました。この状況に対応するため、ELNはFARCとの共闘を進めましたが、2010年にはその戦闘員数が約2,500人にまで減少しました。

和平交渉の展開

政府はFARCと進めていた和平交渉に加え、ELNとも接触を始めました。2013年8月にはサントス大統領が和平交渉の意向を示し、2015年にはELN側も交渉に臨む意思を表明しました。2017年9月には、一時的な停戦が合意されましたが、ELNはその後、石油パイプラインに対する爆弾テロを行うなど、攻撃を続けました。

2018年5月にはキューバ政府の仲介により、再度の和平交渉が始まりました。しかし同年9月、ドゥケ大統領が和平再開のために人質全員の解放と「犯罪活動」の停止を求めると、ELNはこれを拒否しました。その後、ELNは政治的解決を求める姿勢を示しながらも、依然として軍や警察、石油インフラを標的にした攻撃を続けています。

最近の動向

2019年1月、ELNはボゴタの警察学校を爆破し、多くの死傷者を出しました。この事件を受け、コロンビア政府はELN幹部の引き渡しを求めるなどの対応をしました。2022年11月には再度の和平交渉が発表され、2023年1月にはグスタボ・ペトロ大統領が6ヶ月間の停戦に合意しました。

2023年6月には、さらに6ヵ月の停戦が行われる旨が正式に発表され、ペトロ大統領は「武器による争いを終わらせるべき」と述べました。

まとめ

民族解放軍は、設立から数十年にわたってコロンビアの政治情勢に大きな影響を与えてきた組織ですが、その姿勢や行動は、依然として議論の的となっています。和平交渉の進展や停戦の合意は確認されているものの、暴力行為が続いており、解決には時間がかかると見られています。

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