民衆歌謡

民衆歌謡の背景と発展

民衆歌謡（みんしゅうかよう）は、韓国において民主化運動や労働運動、農民運動、学生運動などと密接に結びついている音楽のジャンルです。この音楽は、それぞれの時代における人々の闘いや思いを歌に込めたものであり、韓国社会の歴史を色濃く反映しています。

民衆歌謡の誕生

民衆歌謡の始まりは、1970年代の末に遡ります。この時期、韓国では第四共和国時代の民主化運動が盛んになり、特に学生たちが中心となって様々な活動を繰り広げました。彼らは商業主義的な大衆歌謡に反発し、自らの声を反映させるために新たな歌を創作し始めました。初期の民衆歌謡は、セットデモ活動や運動に寄与するために、既存の曲の替え歌を作り出すことから始まりました。

代表的なフォークシンガーである金民基（キム・ミンギ）は「ともだち」や「朝露」などの作品を発表しましたが、1975年には政府からの圧力により、彼の作品も発禁処分にされました。それでも彼の音楽は学生の間で歌い継がれ、民衆歌謡の礎となります。

1980年代の変化

1979年、朴正煕の暗殺以降、韓国は新しい政治的潮流を迎えましたが、すぐに新軍部の圧政が始まりました。この状況下でも、1983年から1984年にかけて多くの草の根団体が形成され、1985年には「民主統一民衆運動連合」が結成されました。この運動の広がりとともに、民衆歌謡は組織的な運動の一部として進化し、歌の持つ社会的影響力が重視されるようになりました。

この時期には「五月の歌」や「イムのための行進曲」など、光州事件をテーマにした新たな曲が生まれ、民衆歌謡の表現が深化していきました。

民主化以降の発展

1987年に起こった民主化運動は、広範な人々を巻き込み、特にサラリーマンや公務員もデモに参加しました。この結果、政府は直接選挙のための憲法改正を受け入れるに至ります。この関連で、労働者を主体とした民衆歌謡が大量に創作され、「同志」や「ストライキ歌」などが労働現場で歌われるようになりました。

1990年代から現在まで

1990年代に入ると、環境運動や女性運動など、市民運動が多様化し、それに伴って多様なメッセージが込められた民衆歌が増えていきました。1993年には「韓国民族芸術人総連合」が社団法人化し、さらに活動を加速させることになります。また、1994年には民衆歌謡グループ『希望の歌 コッタジ』が合法的なアルバムを発表しました。

最近では、毎年約100曲もの新しい民衆歌が登場しており、南北交流の進展により、統一を願う曲も作られるようになっています。例えば「わが民族同士で」や「京畿線に乗って」といった曲は、南北関係の改善を意識した作品です。さらには、日本と韓国の歌の交流も進んでおり、民衆歌謡の重要性は今なお高まっています。

民衆歌謡は、ただの音楽ではなく、社会の変革を求める人々の声であり続け、その影響は現代まで続いています。

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