水をかけられた散水夫

『水をかけられた散水夫』（原題：L'Arroseur Arrosé）は、1895年にリュミエール兄弟によって製作されたフランスの短編映画です。モノクロ、サイレント作品であり、別邦題として『庭師』、『水をかけられた撒水夫』などがあります。

物語は、庭師がホースで水撒きをしているところに、いたずら好きな少年が現れ、ホースを踏みつけて水を止めてしまうことから始まります。庭師が不思議に思いホースの先を覗き込むと、少年は足を踏み外し、庭師は水浸しになります。怒った庭師は少年を追いかけ、お仕置きをするという、シンプルな内容です。

当時、リュミエール兄弟は『工場の出口』のような、町の風景や日常を捉えた記録映画を主に製作していました。しかし、この『水をかけられた散水夫』は、明確なプロットに基づいた演出が施された、初の作品として知られています。また、笑いの要素を取り入れたことで、コメディ映画の先駆けともなりました。

本作は、1895年12月28日にパリのグラン・カフェ1階のサロン・ナンディアン（インドの間）で、『工場の出口』などの作品と共に有料公開されました。この上映は、世界初の映画興行として映画史に名を刻んでいます。

この映画の着想源は、フランスの画家ヘルマン・フォーゲルの描いた漫画であると言われています。

出演者

水をかけられる庭師を演じたのは、実際にリュミエールの父親の庭師だったフランソワ・クレールです。そして、いたずらをする少年を演じたのは、リュミエール工場の見習い大工だったブノワ・デュヴァルです。

コピー作品とオマージュ作品

映画の著作権に関する意識がまだ確立されていなかった当時、本作はフランス国外でも模倣され、イギリスやアメリカなどで類似作品が多数製作されました。さまざまなバージョンの作品が流出し、広まることになります。1896年には、ジョルジュ・メリエスが『L'Arroseur』という題名でリメイクしましたが、残念ながらこの作品は現存していません。

後世の映画監督にも影響を与えており、1958年には、フランソワ・トリュフォーが自身の短編映画『あこがれ』の中で、テニスコートでの水撒きのシーンで、本作へのオマージュとして「水撒きをする人が逆に水を撒かれる」というギャグを再現しています。また、アニエス・ヴァルダの映画『百一夜』にも、オマージュシーンが見られます。

Institut Lumière
L'arroseur arrosé - IMDb（英語）

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