水口幸広

水口 幸広

水口 幸広（みずぐち ゆきひろ）氏は、日本の漫画家・イラストレーターとして、その独特な視点と親しみやすい作風で知られています。1966年11月2日に東京都葛飾区に生まれ、2023年5月12日に56歳で急逝するまで、多岐にわたる分野で活躍しました。愛称である「画伯」または「水口画伯」として、多くのファンから親しまれました。実家は理髪店を営んでおり、この家庭環境は自身の代表作においてもユーモアの源泉となることがありました。

来歴と作風

水口氏のキャリアにおいて最も重要な位置を占めるのが、長期連載された漫画作品『カオスだもんね!』です。この作品は、雑誌『週刊アスキー』の前身である『EYE-COM』誌で連載を開始し、その後も長く続く看板作品となりました。本作の最大の特徴は、作者である水口氏自身が主人公となり、身の回りの出来事や関心を持った事柄について、自ら取材や体験を行い、それを漫画としてレポートするスタイルにあります。

取材対象は非常に幅広く、世の中のユニークな場所や風習、ホビーの世界（特に『機動戦士ガンダム』関連）、最新の技術やサービスを提供する企業への訪問など、多岐にわたりました。また、自宅でのビール作りや燻製食品作りといった、日常生活に根差した体験レポートも人気を博しました。水口氏自身は、この独特のスタイルを「社会派レポート漫画」と位置づけていました。これらの活動を通じて、読者は水口氏の視点を通して、様々な世界の「カオス」で魅力的な側面を知ることができました。

『カオスだもんね!』以外にも、『無敵素敵ロボ ボルナッス』や『パンツマン』といった、純粋なストーリー漫画作品も手掛け、こちらも独自の世界観で人気を集めました。

多様な活動

漫画家としての本業に加え、水口氏は様々なメディアでその才能を発揮しました。特にインターネットラジオや動画配信の分野では、草分け的な存在として知られています。自身の愛称を冠した番組『水口画伯の眠らせナイト』シリーズを皮切りに、配信プラットフォームや番組名を変更しながら、『眠らせナイツ!』『爽やかナッシング』『HOME SHOW』など、多数の番組を継続的に配信しました。これらの番組では、リスナーとの距離の近い語り口で人気を博しました。また、テレビ番組『西田二郎の無添加ですよ!』の一コーナーでナレーターを務めた際には、本名ではなく「ナレーション 水口画伯」とクレジットされるなど、愛称が定着していました。

アニメやゲーム分野にも関与しており、OVA『インフェリウス惑星戦史外伝 CONDITION GREEN』の原案や、PlayStation用ソフト『ガンナーズヘブン』のキャラクターデザインとマニュアル製作なども手掛けています。これらの活動は、水口氏が漫画という枠を超えて、広範なクリエイティブな分野で活躍していたことを示しています。

作品リスト（主要なもの）

単行本
『カオスだもんね!』（全20巻、アスキー・メディアワークス）
『カオスだもんね!PLUS』（既刊5巻、アスキー・メディアワークス）
電子書籍
上記単行本に加え、未収録作品も電子書籍化されています。
『続 カオスだもんね！PLUS』（没後刊行、電子書籍シリーズ）

晩年と死去

2023年5月12日午前4時頃、水口幸広氏は急性心不全のため急逝されました。享年56歳でした。この訃報は、同年6月21日に公表され、多くのファンや関係者に深い悲しみをもたらしました。最後の活動の一つとなった動画配信番組『HOME SHOW』は、没後も追悼特別番組が配信されるなど、その存在の大きさが偲ばれました。

水口幸広氏が遺した作品群と多岐にわたる活動は、日本の漫画やサブカルチャーの歴史において、独自の一章を築いています。彼のユニークな視点、取材に裏打ちされたレポート、そして何よりも読者を楽しませようとするサービス精神は、これからも多くの人々の記憶に残り続けることでしょう。

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