水口拓弥

水口 拓弥（みずぐち たくや）

経歴

水口拓弥氏は、1994年8月20日、兵庫県神戸市に生まれました。現在のプロ野球審判員としての袖番号は「54」です。

幼い頃から野球に親しみ、小学生時代から頭角を現します。特に捕手として、その強肩強打は高く評価されていました。中学時代にはチームのキャプテンを務め、全日本少年軟式野球の兵庫県決勝大会で3位入賞を果たすなど、選手として輝かしい実績を残し、この頃からプロ野球選手を夢見るようになります。

野球の道を究めるため、高校は野球の強豪校として知られる広島県の広陵高等学校に進学し、硬式野球部に入部します。しかし、レベルの高い環境の中で苦労し、さらに2年生の夏には左肩を完全に脱臼するという重傷を負い、手術を経験しました。この怪我により、選手としての現役続行を断念せざるを得ない状況となります。

選手としては道を閉ざされましたが、「どうしても野球に関わる仕事で生計を立てたい」という強い思いを抱いていた水口氏は、広陵高校の中井哲之監督から審判講習会への参加を勧められます。この講習会に参加したことが、野球に対する見方を大きく変え、野球審判員を目指すきっかけとなりました。ちなみに、高校時代の同級生には、後にプロ野球選手として活躍する佐野恵太氏がいました。

審判員としての歩み

高校卒業後、水口氏は独立リーグである四国アイランドリーグplusで審判経験を積むため、香川県の四国学院大学へ進学しました。大学での学業と並行しながら、独立リーグの公式戦で精力的に審判を務め、実戦経験を重ねていきました。

2013年12月には、日本野球機構（NPB）が初めて開催したアンパイア・スクールに参加し、これを修了します。そして、2014年3月からはNPBの研修審判員としての活動を開始しました。この年、再び四国アイランドリーグplusへ派遣され、その審判ぶりが高く評価され、リーグの最優秀審判員に選ばれています。

2014年12月24日、水口氏は日本野球機構審判部に育成審判員（関西所属）として正式に入局を果たしました。

NPB入局後は、主にファームリーグであるウエスタン・リーグを中心に経験を積み、審判技術を磨きました。その努力が実を結び、2018年、2019年と2年連続でウエスタン・リーグの優秀審判員に選出されるなど、将来を嘱望される存在となっていきます。また、2016年8月には、広島ホームテレビが高校球児を応援するキャンペーンの一環として、水口氏に密着したドキュメンタリー番組『憧れのフィールド〜夢を叶えた審判〜』が制作され、その経緯と決意が紹介されました。

一軍デビュー

そして、2021年4月16日、水口氏はいよいよプロ野球の一軍公式戦のフィールドに立ちます。この日は、阪神甲子園球場で行われた阪神タイガース対東京ヤクルトスワローズの4回戦でした。

この記念すべき一軍初出場で、水口氏は球審を務めました。球審として一軍公式戦に初出場するのは非常に珍しいケースであり、日米審判員交流で1997年に来日したマイク・ディミュロ氏を除くと、実に51年（1951年以来）ぶりという異例の出来事でした。

しかし、初陣は波乱含みのものとなります。この試合で阪神の先発投手だった藤浪晋太郎投手の投球が、水口氏の左手に3度も直撃するというアクシデントに見舞われました。2回と3回のヤクルトの攻撃が終了した後には、阪神ベンチで治療を受けるという一幕もありましたが、最後までその責務を果たしました。

2024年度シーズン終了時点での一軍公式戦出場試合数は、135試合となっています。

選手としての経験を活かしながら、正確なジャッジを目指す若手審判員として、今後の更なる活躍が期待されています。

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