水嶋智

水嶋 智（みずしま さとる）

水嶋 智氏は、1963年（昭和38年）6月28日、京都府京都市に生まれ、日本の運輸・国土交通行政において長きにわたり活躍した官僚です。京都市内の洛星高等学校を卒業後、東京大学法学部第2類（公法コース）へ進み、1986年3月に同学部を卒業しました。在学中に国家公務員採用Ⅰ種試験（法律）に合格し、同年4月、運輸省に入省しました。

官僚としてのキャリア

運輸省入省後、水嶋氏は運輸行政の幅広い分野で経験を積みました。国際運輸・観光局、航空局、海上交通局など、運輸、交通に関する様々な部署で実務に携わり、知見を深めていきます。また、外務省への出向も経験し、経済協力開発機構（OECD）の日本政府代表部にて一等書記官、参事官として勤務するなど、国際的な舞台での経験も有しています。

2003年からは国土交通省の職員となり、大臣官房や総合政策局、観光庁などで要職を歴任しました。具体的には、大臣官房総務課企画官、会計課企画官、航空局監理部総務課ハイジャック・テロ防止対策室長、総合政策局観光経済課観光交通政策推進室長、観光資源課長などを務め、特に観光政策の企画・推進に深く関与しました。その後も観光庁観光地域振興部観光資源課長、観光庁総務課長といったポストを経て、観光行政の分野で重要な役割を果たしました。

主要幹部ポスト

キャリアを重ねる中で、水嶋氏は国土交通行政の中枢を担う幹部ポストに就任していきました。2015年には国土交通省大臣官房審議官（総合政策局、鉄道局担当）となり、広範な政策分野の調整に関わります。2016年6月には鉄道局次長に就任し、日本の鉄道行政の重要な局面に関与しました。

2017年7月からは観光庁次長に昇任し、日本の観光立国推進戦略の実行に貢献しました。さらに、2018年7月には国土交通省海事局長として海上交通や海運政策を、2019年7月には国土交通省鉄道局長として鉄道に関する政策や事業を統括しました。鉄道局長時代には、リニア中央新幹線静岡工区の問題に関して、有識者会議でのやり取りを巡り、静岡県知事から名指しで批判を受ける場面もありました。

2020年7月には、省内の要職中の要職である大臣官房長に就任し、組織全体の運営や人事などを統括する役割を担いました。

大臣官房長辞職と異例の展開

大臣官房長就任から半年足らずの2021年1月5日、水嶋氏は国土交通省を辞職しました。しかし、その翌日である1月6日、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の副理事長に就任するという異例の展開を見せました。これは、国土交通省の現役官房長経験者が、通常であれば退職後の再就職先となることの多い独立行政法人の副理事長に、辞職直後に就任するという前例のないものであり、当時大きな注目を集めました。

この異動の背景には、前年12月に発覚した北陸新幹線金沢―敦賀間の延伸工事の遅延問題があり、建設主体である同機構に対し、国土交通省が業務改善命令を発出し、当時の副理事長が辞任したという事情がありました。

最高幹部ポストへの復帰

独立行政法人での副理事長職を務めた後、水嶋氏は2022年6月28日付で再び国土交通省に戻り、国土交通審議官に就任しました。国土交通審議官は、事務次官に次ぐ省の最高幹部ポストの一つであり、その就任は、水嶋氏が長年にわたる多様なキャリアを通じて培ってきた高い識見と行政手腕が、再び省の運営において不可欠と判断されたことを示しています。

人物像

学生時代は、東京大学においてオリエンテーリングクラブに所属し、精力的に活動していたようです。学業に加え、課外活動にも積極的に取り組む一面も持ち合わせていたことがうかがえます。

水嶋智氏のキャリアは、運輸省時代から国土交通省に至るまで、国内外の幅広い分野で重要な政策決定や事業推進に関与してきた軌跡です。特に、主要局長、官房長といった要職を歴任した後の異例の異動、そして最高幹部ポストへの復帰は、その能力と経験に対する省内外からの評価の高さを示すものと言えるでしょう。

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