水平対向12気筒

水平対向12気筒エンジンについて

水平対向12気筒（Boxer-12）は、特異なシリンダー配置を持つレシプロエンジンの一つであり、主に自動車の内燃機関として利用されています。このエンジン形式は、12気筒が6気筒ずつ対向して配置されており、一般にはフラット12（Flat-Twelve）とも呼ばれています。特にボクサー12は、クランクシャフトの配置に基づいて様々な特性を持ち、性能や振動特性もよく議論されています。

構造と特性

水平対向12気筒エンジンは、一般的な180°V型エンジンに比べて幅広であり、全高を低く設計できるという利点があります。これによりエンジンの重心も低くなるはずですが、実際にはエキゾーストマニホールドなどの排気系の配置によって、重心の低さが十分に活かされない場合が多いのです。特に自動車の設計では、広いエンジンの幅がフロントエンジン部における空間効率に影響を及ぼし、搭載フレームの設計が難しくなることがあります。

加えて、エンジンの振動に関しては、V型エンジン全般に共通する問題でもあり、どのバンク角のV型12気筒エンジンでも一次振動と二次振動はある程度相殺されます。これによりボクサーエンジンもV型に比べて明確な利点が少なく、商業車両ではフラット12エンジンの採用はあまり見られません。

種類の分類

フラット12エンジンはクランクシャフトの位相によって二つにタイプが分かれます。狭義の水平対向エンジンは180°のクランクピン位相を有したもので、この場合、2組のピストンが対称的に動作し合い、振動を打ち消す構造となっています。一方、クランクピンを共有しているタイプは180°V型エンジンと呼ばれ、広義の水平対向エンジンに含まれることもあります。

ボクサー型と180°V型の最大の違いはクランクシャフトの形状であり、外見ではほとんど区別がつきませんが、エンジン設計や駆動形態において重要な影響を与えます。特に12気筒エンジンの場合、広範にわたって180°V型が使用されています。

レースエンジンとしての使用

自動車レースでは、フラット12（主に180°V型）エンジンがF1カーや耐久レース用に広く利用されました。1960年代中盤においては、フェラーリの1512F1がこのエンジンを搭載し、競技シーンで活躍。その後、1970年代後半に登場したグランド・エフェクトカーにより、フラット12エンジンは次第に時代遅れと見なされるようになりました。特にポルシェの917が耐久レースでの成功を収め、その影響は後のフェラーリのF1エンジン開発にも及びました。

その後、フェラーリは水冷3.0Lの180°V型12気筒エンジンを数十年にわたり使用し、かなりの成功を収めました。アルファロメオは同様にこのエンジンを用いたモデルを登場させ、レースの舞台で互いにしのぎを削りました。

その他の用途

レースだけでなく、公共交通機関にもこのエンジン形式の採用例が見られます。日本の高速バスや鉄道車両には、水平対向12気筒のディーゼルエンジンが搭載されていたものの、厳密にはV型エンジンに分類されることになります。また、軍用車両においても例があり、その特異なレイアウトのために冷却不足という問題を引き起こしたケースも存在します。

このように、水平対向12気筒エンジンには多様な用途と特性があり、それぞれの場面で技術的な興味を引き続けています。

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