水木しげるの妖怪事典

『水木しげるの妖怪事典』は、漫画家・水木しげるが描いた妖怪に関する解説書と画集です。東京堂出版から1981年から2000年にかけて、全6巻が刊行されました。本シリーズは、水木しげるの独特な視点と画力で、妖怪の世界を深く掘り下げた作品として、多くのファンを魅了しています。

概要

シリーズは、A5判変形の横長ハードカバーで、右ページに解説、左ページにイラストという構成が特徴です。初版は函入りでしたが、『水木しげるの中国妖怪事典』から函なしの仕様に変更され、初期の作品も後に同様の仕様に改められました。

シリーズの内容は多岐にわたり、『水木しげるの妖怪事典』（正・続）では、日本各地に伝わる妖怪たちが描かれています。これらの妖怪画は、単なる絵画としてだけでなく、日本の民間信仰を研究する上での貴重な資料としても評価されています。『水木しげるのあの世の事典』では、世界の冥界や地獄に関する伝承が地域ごとに紹介されており、チベットの『死者の書』、日本の『往生要集』、ダンテの『神曲』など、様々な宗教や神話に触れています。『水木しげるの世界妖怪事典』（正・続）では、世界各地の神話に登場する妖精や精霊などが描かれており、ヨーロッパやアジアの妖怪文化に触れることができます。『水木しげるの中国妖怪事典』では、『山海経』や『捜神記』といった中国の古典に登場する妖怪や、民間信仰における妖怪が紹介されています。

水木しげるは、1981年頃に仕事が激減し、約3年間連載のない時期を過ごしました。しかし、その間もアシスタントの協力を得て妖怪画の制作を続け、膨大な数の妖怪画が蓄積されました。これらの妖怪画が、本シリーズ出版の原動力となり、息の長いシリーズへと繋がっていきました。

シリーズ一覧

1. 『水木しげるの妖怪事典』、1981年9月、ISBN 4-490-10149-X
2. 『水木しげるのあの世の事典』、1983年6月、ISBN 4-490-10168-6
3. 『水木しげるの続・妖怪事典』、1984年7月、ISBN 4-490-10179-1
4. 『水木しげるの世界妖怪事典』、1985年7月、ISBN 4-490-10199-6
5. 『水木しげるの中国妖怪事典』、1990年10月、ISBN 4-490-10282-8
6. 『水木しげるの続・世界妖怪事典』、2000年9月、ISBN 4-490-10555-X

備考

ドラマ『ゲゲゲの女房』では、水木しげるがスランプに陥り、妖怪・小豆洗いとの遭遇をきっかけに『水木しげるの妖怪事典』の制作を始めるというエピソードが描かれています。また、別の回では、水木しげるの父親が『水木しげるのあの世の事典』を愛読している様子が描かれています。ドラマでは、『水木しげるの続・妖怪事典』の制作過程までが描かれました。

参考文献

志村有弘『水木しげるの魅力』勉誠出版、2002年7月。ISBN 4-585-09075-4。
水木しげる『水木サンの幸福論』角川文庫、2007年4月。ISBN 978-4-04-192919-3。
* 『妖怪まんだら 水木しげるの世界』世界文化社、2010年7月。ISBN 978-4-418-10121-4。

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