水深ゼロメートルから

戯曲『水深ゼロメートルから』の概要

『水深ゼロメートルから』は、ある夏の高校生たちの葛藤を描いた作品で、執筆者は当時徳島市立高等学校の演劇部に所属していた中田夢花です。この戯曲は、2019年第44回四国地区高等学校演劇研究大会で「文部科学大臣賞（最優秀賞）」を受賞し、その注目度は高まりました。

主なストーリー

物語は、夏休みのある日、特別補習を受けることになった女子高校生のミクとココロが、体育教師の山本から学校の空っぽのプールで掃除をするよう指示されるところから始まります。故障のため水がないプールの底には、隣の野球部のグラウンドから飛んできた砂が積もっており、彼女たちはこれを掃除することに。そこに、水泳部のチズルと引退した先輩ユイが合流し、4人で掃除をする姿が描かれます。

彼女たちは、掃除をしながら、見た目やメイク、生理の悩み、性差についての思いなどを率直に語り合います。この会話劇は、友情や個々の抱える思いや問題を浮き彫りにしながら物語が進行していきます。

重要なシーンとテーマ

物語の中で、野球部のエース・楠のボールがプールに飛び込んでくるシーンがあります。チズルは楠に複雑な感情を抱いており、ボールを投げ返すことに葛藤します。この瞬間が、彼女たちの心の成長や友との関係の変化を象徴しています。特に、ミクは自分を大切に想う気持ちを周囲と共有し、ココロも自己表現をしたい願望を持っています。

また、チズルが楠に向かって怒りをぶつけてボールを投げるシーンは、自分の存在を知らしめたいという彼女の強い気持ちを表現しています。彼女たちが出会う中での絆の深まりや、成長の過程が描かれており、観る人々に深い感動を与えます。

舞台と映画の展開

2021年11月には、東京・下北沢の「劇」小劇場で舞台として上演され、メインキャストはオーディションで選ばれました。演出は「虚構の劇団」の小沢道成が担当しています。舞台の成功を受け、2024年5月3日には映画にもなり、同じキャストが続投することが決まっています。

映画は、戯曲を題材にし、実際の高校生の日常や友情、成長をリアルに描いています。その監督を務めるのは山下敦弘で、映画版には新たなキャラクターが登場し、物語に新しい風を吹き込む役割を果たしています。

キャラクター紹介

本作には、個性豊かなキャラクターが登場します。ココロはメイクを大切にする女子であり、ミクは自由に踊りたい気持ちを抱えています。チズルは水泳部の部長で、自分の限界に悩みながら成長する姿が印象的です。ユイは彼女たちの先輩で、見守ることで友情を育む存在です。

この作品『水深ゼロメートルから』は、若さと友情の本質を探求し、観客に様々な思考を引き起こす貴重な作品です。女子高校生たちの内面的な葛藤や成長をしっかりと描写し、共感を呼ぶ内容になっています。

もう一度検索