水茶屋

水茶屋の歴史と魅力

水茶屋（みずぢゃや、みずちゃや）は、江戸時代において特に道ばたや社寺の境内で、湯茶を提供し、行き交う人々に休息をもたらすための茶屋でした。このような茶屋は「掛茶屋」とも称され、庶民の日常生活の中で重要な役割を果たしていました。

位置と特徴

水茶屋は主に江戸の賑やかなエリア、特に上野山下や両国広小路、さらには参詣人が多く訪れる寺社の近くに位置していました。その中でも特に有名なのは、浅草観音の境内にある伝法院の周辺に並んだ二十軒の茶屋です。これらの茶屋は多くの観光客や参拝者に利用され、賑わいを見せていました。

『江戸真砂六十帖広本』には、江戸の各地で水茶屋が開かれるようになった経緯が記されています。特に、享保十八年には嵯峨釈迦如来回向院の開帳をきっかけに両国橋の川端にも茶屋が開設され、その後元文四年には信州善光寺の開帳に合わせて新たな茶屋が登場し、ますます数を増していったようです。

提供される茶と価格

水茶屋での茶の提供方法は興味深いものでした。最初に、約6匁の茶を小さな茶濾で入れ、上から湯を注いで客に提供しました。その後しばらくすると、特別な要望がなくても塩漬の桜や香煎を加えた白湯が出されるというスタイルです。客は自分の飲む茶に対して100文を置くこともあれば、友人と共に合計で100文や200文を置くこともありました。一般的には、一人あたり24文から50文が標準的な額だったようです。

看板娘とその魅力

水茶屋はただ茶を飲むだけの場所ではなく、特に給仕をする女性たち「看板娘」の存在が大きな魅力となっていました。評判の高い給仕の女性たちには、明和年間の谷中笠森稲荷境内で働いていたおせんや、寛政年間の浅草随身門前の難波屋のおきた、両国薬研堀の高島屋のおひさなどがいました。彼女らは鈴木春信や喜多川歌麿などの絵師によって一枚絵として描かれ、当時の「ブロマイド」として人々に親しまれていました。

看板娘たちは、店の雰囲気に合わせた「芸名」を持つことが多く、彼女たちの存在は茶屋の魅力を一層引き立てる要素となっていました。寛政年間の書物には、彼女たちの華やかな装いについて詳しい描写があり、髪型や衣装、化粧に関するスタイルが印象的に語られています。彼女たちの姿は、当時の江戸風俗を如実に伝える貴重な資料となっており、江戸時代の文化を知る手助けとなります。

水茶屋は、ただの飲食の場を超え、江戸時代の人々の生活様式や文化、そして交流の場として重要な役割を果たしていました。その魅力は今もなお、歴史を学ぶ上で大切なスポットとなっているのです。

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