水谷緑亭

水谷 緑亭とは

水谷緑亭（みずたに りょくてい）は、江戸時代の有名な川柳作家であり、5世川柳を名乗った人物です。本名は雅好で、幼少期に父を亡くした後、江戸の佃島で漁師に養われました。後に魚問屋を開いて名主となり、地域社会に貢献しながら、川柳の道に進みました。特に彼は川柳の名門である柄井家から多くを学び、その後「腥斎 佃」という号を名乗るようになりました。

略歴

緑亭が川柳の世界に足を踏み入れたのは、2世川柳である柄井弥惣右衛門から学び始めた頃からです。彼の作品は、江戸時代の川柳ブームを牽引し、その後の川柳のスタイルにも影響を与えました。が、彼が活躍する以前に、川柳は一時的に衰退していました。4世川柳である人見周助がその流れを再び活性化させることとなり、緑亭はその影響を受けつつ5世川柳を継承することとなります。

彼は1837年、天保8年に名乗りをあげ、以降は多くの川柳を詠み、評判を得ました。人柄は地味でしたが、養父母への孝行や地域の風俗を改める活動などを行い、町奉行所から何度も表彰されています。こうした彼の地道な努力が、川柳作家としての地位を固める一助となりました。

柳風式法と句案十体

水谷緑亭は、「柳風式法」と呼ばれる独自の作句に関する規約を作成しました。この中には、川柳作成において注目すべきポイントが詳細に述べられており、特に政治や貴族の実名を避けることが強調されています。このようなルールは、川柳が人々に楽しんでもらえる芸術であるとの意識を持ってのことでした。

柳風式法の中には以下のような項目が含まれています。
1. 政治に関する内容を川柳に用いることは避けるべきである。
2. 実名を用いることは避ける。
3. 災いや不幸に関する内容を強調するべきではない。
4. 川柳は国を愛し、道徳を守る内容を優先するべきである。

また、「句案十体」と呼ばれる10の技法を制定し、これに基づいて作品を創作しました。彼の作品は多くの人々に愛され、川柳の名作として評価されることとなります。

著作と影響

水谷緑亭は、川柳に関する著作を多数執筆しました。中でも『新編柳多留』は、彼が川柳の選集を整理し、1841年から1849年までの間に55編を発行することに成功しました。この選集は、川柳を理解する上での貴重な資料とされています。また、草双紙の『祥瑞白菊物語』や、他の多くの作品にも取り組みました。

最期と遺産

彼は1858年に亡くなりましたが、その功績は川柳界に深く刻まれています。死後は築地本願寺に葬られ、「和らかくかたく持ちたし人心」という言葉が残されています。川柳の名跡は、彼の長子である醒斎ごまめに受け継がれ、その後も川柳の伝統は脈々と受け継がれることとなりました。

水谷緑亭の生涯は、愛や道徳、そして地域社会への貢献の象徴であり、彼の川柳は今なお多くの人々に親しまれています。

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