水野忠宜

水野 忠宜の生涯

水野忠宜（みずの ただよし）は、1877年9月1日、旧紀伊新宮藩の藩主である水野忠幹の長男として東京府に誕生しました。母は田原藩第11代藩主の四女、釥子です。彼は陸軍士官学校の第10期生として学び、1898年11月25日に卒業しました。卒業後は青森県弘前市の第8師団に配属され、1899年6月27日に陸軍歩兵少尉に任官しました。さらに、1901年に仙台地方で行われた大演習を経て、陸軍歩兵中尉に進級します。

1902年、忠宜は歩兵第5連隊第2大隊第8中隊の指揮官として八甲田山での雪中行軍に参加しました。出発の際、病床にある父にその報告をしたところ、父は彼の勇気を称賛し、防寒着を送ってくれました。忠宜はその防寒着を着て1月23日に行軍を開始しましたが、翌日、厳しい自然の中で遭難してしまいます。

八甲田雪中行軍遭難事件では、忠宜は周辺の地形に詳しく、積極的に探検を試みました。しかし、駒込川の沢を脱出する際に意識を失い、凍死してしまいました。彼の遺体は1月31日に鳴沢で発見され、葬儀は2月23日に和歌山県新宮市の本広寺にて執り行われました。彼は鎌倉市の高松寺に埋葬され、法号は瑞雲院殿忠宜日徳大居士です。また、和歌山県新宮市には水野家の墓所があります。

忠宜は兄弟の多くが他家に養子に出された中、父の死後、末弟の重吉が家督を継ぎました。彼には狩猟と写真撮影という趣味があり、特に冬には八甲田山でウサギや青森湾でカモを狩ることを楽しんでいました。八甲田山雪中行軍の際、彼は愛用のカメラを持参しており、彼の従卒であった小野寺庄右衛門の遺体近くでそのカメラが発見されています。

この歴史的事件や彼の生涯は、後に映画『八甲田山』（1977年）で描かれ、俳優の古川義範が忠宜を仮名の小野中尉として演じました。水野忠宜の生涯は、短いながらも日本の陸軍史において重要な一ページを刻んでいます。彼の勇気や業績は、現代でも人々の記憶の中に留まり続けています。

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