防寒着

防寒着とは

防寒着とは、寒さから身を守るために着用する衣服のことです。その歴史は古く、地域や文化によって様々な種類の防寒着が存在します。

ヨーロッパの防寒着

セーター

ヨーロッパの伝統的な防寒着として、セーターが挙げられます。セーターの起源は、11世紀にノルマン人がイスラム世界の手芸技術に触れ、それを持ち帰ってイギリス海峡の島々に伝えたことにあると言われています。特に、ジャージー島で作られるプルオーバー式の編み物は「ジャージー」と呼ばれ、これが現代のセーターの原型となりました。

また、ジャージー島の近くにあるガーンジー島では、漁師のために編まれた「ガーンジー」というセーターが有名です。このセーターは、水しぶきや雨を防ぐために糸をしっかりと撚り、堅く編まれており、独特の編み柄が特徴です。その柄は母から娘へと伝えられ、家族の絆を表す役割も果たしていました。

アラン諸島のアランセーターもまた、「フィッシャーマン・セーター」として知られています。アランセーターには、漁に出る夫の無事と豊漁を願う女性たちの愛や祈りが込められているとされ、編み柄は各家庭ごとに異なっています。ただし、アランセーターの歴史は、ジャージー島やガーンジー島のセーターに比べて浅く、20世紀になってから編まれるようになったとされています。

コートとジャケット

18世紀から19世紀にかけては、コートが一般的な防寒着として着用されていました。20世紀に入ると、2度の世界大戦中にパイロットが着用したフライトジャケットが誕生し、その後、街着としても普及しました。さらに21世紀初頭からは、フリース素材の防寒着が世界的に広まりました。

登山やスキー用の防寒着

登山では、かつてはセーターやアノラックなどが使われていましたが、最近ではフリースやダウンジャケット、透湿防水ウェアが主流です。スキーでは、初期には登山用と同じ防寒着が使われていましたが、20世紀後半には、スキー専用のウェアが普及し、現在では透湿防水素材を用いたものが多くなっています。

日本の防寒着

日本では、戦後しばらくの間、暖房器具が十分に普及していなかったため、衣服による防寒が重要でした。当時の防寒着としては、羽織、半纏、掻巻、ひっぱり、「でんち」と呼ばれる袖なしのちゃんちゃんこなどがあり、重ね着をして寒さをしのいでいました。羽織は外出着として、半纏は実用的な防寒着として、ひっぱりやでんちは仕事着として使われていました。

綿入れは、表布と裏布の間に綿を入れたもので、当時の防寒着として欠かせないものでした。羽織、半纏、丹前（どてら）などが綿を入れて仕立てられました。養蚕地では、真[[綿]]を首に巻いたり、襦袢の上に着て防寒に用いました。また、真[[綿]]を薄く着物に入れた背負い真[[綿]]は、かさばらずに暖かい防寒着として用いられました。

明治後半には、男性用の和洋折衷の外套「とんび」が広まりましたが、これは1枚で1.8kgもあり、当時の防寒着は重いものが多かったようです。これは、当時の服が「暖かい」ということは「重い」ということを意味していたためです。

近年の防寒着

近年では、フリース素材やダウン素材など、軽量で暖かい素材を使用した防寒着が普及しています。また、透湿防水素材を使用したウェアも、アウトドアスポーツだけでなく、普段使いとしても人気があります。

防寒着は、その時代や環境、文化によって様々な形に変化してきましたが、寒さから身を守るという基本的な役割は変わっていません。今後も新しい技術や素材の開発によって、より快適で機能的な防寒着が登場することが期待されます。

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