水雷艦長

水雷艦長：帽子と三すくみで繰り広げる子供たちの海戦

水雷艦長、駆逐戦艦、あるいは水雷ぼっかんと呼ばれるこの遊びは、戦艦、駆逐艦、水雷艇の三種類の艦艇を役割分担し、じゃんけんのような三すくみの関係性を利用して戦う、日本の子供たちの屋外遊びです。第二次世界大戦前より昭和40年代頃まで、特に男の子を中心に広く親しまれていました。帽子をかぶる習慣の変化とともに、次第に廃れていったとされています。

基本ルール：海上の攻防

遊びは、二つのグループに分かれて行われます。各グループは、(a)戦艦1名、(b)駆逐艦数名、(c)水雷艇数名と、役割を割り当てます。

三すくみの関係性: 戦艦は駆逐艦を、駆逐艦は水雷艇を、水雷艇は戦艦を撃沈できます。
撃沈: 敵を触って捕まえれば撃沈となり、捕らえられた者はその場でしゃがみ込みます。
基地: 基地（陣地）を設けている場合、撃沈ではなく抑留となります。戦艦は、抑留された味方の艦艇を救出できます。
敗北: 戦艦が捕らえられると、そのグループの敗北となります。

役割表示：帽子のかぶり方

各艦艇の役割は、帽子のかぶり方で識別します。

戦艦: 帽子をつばを正面に向けて真っ直ぐかぶります。
駆逐艦: 帽子をつばを真横または真後ろに向けてかぶります。
水雷艇: 帽子をつばを真後ろに向けてかぶるか、無帽です。

野球帽や学生帽など、つばのある帽子が必須の小道具でした。

バリエーションとローカルルール：遊びの多様性

水雷艦長には、地域や時代によって様々なバリエーションが存在します。

別称: 「駆逐戦艦」、「水雷艦長」、「本官」、「じらこ」など、地域によって呼び名が変わります。役割名も、「艦長」、「士官」、「水兵」、「元帥」、「横」、「後ろ」など、地域差が見られます。
役割の変更: 戦艦役を「艦長」と「その他の戦艦」に分ける場合もあります。この場合、艦長だけが味方の救出を担います。また、水雷艇役を潜水艦とするバリエーションも存在します。
袖の活用: 服の袖をまくって役割を示す方法もあります。戦艦は袖をまくらず、駆逐艦は片袖をまくり、水雷艇は両袖をまくります。
信号役: トランプのジョーカーのような「信号」役を加える場合もあります。この役は他の艦艇全てに勝てますが、戦艦には負けます。
じゃんけん: 同種の艦艇同士が接触した場合は、じゃんけんで勝敗を決めるルールもあります。基地にいる場合は、一旦基地に戻らなければなりません。
* 掛け声: 「軍艦じゃんけん」や「海戦/会戦、ドン！」といった掛け声も用いられます。

水雷艦長が登場する作品

小説「会長の切り札」第二巻では、登場人物たちが水雷艦長を用いて対決する場面が登場します。

類似の遊び

陣取りやSケン、イカゲームなどの子供遊びと、共通点が見られます。

まとめ

水雷艦長は、シンプルながらも奥深いルールと、地域差のあるバリエーションが特徴的な、日本の伝統的な子供遊びです。帽子という身近な道具を用いながら、子供たちは海戦さながらの戦略と駆け引きを楽しみ、高度な社会性を培ってきたと言えるでしょう。この遊びは、現代の子供たちにはほとんど知られていないかもしれませんが、日本の遊び文化の一端を垣間見ることができる貴重な存在です。

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