氷と炎の歌の世界

ジョージ・R・R・マーティンによるファンタジー小説シリーズ『氷と炎の歌』の舞台となる架空の世界は、ウェスタロスとエッソスの二つの主要な大陸を中心に展開します。この世界は、HBOのドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』とその前日譚『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の基盤ともなっています。

物語は、ウェスタロス大陸の王座を巡る名家同士の争い、北の国境を脅かす異形の存在、そして内戦で亡くなった王の娘デナーリス・ターガリエンによる王位奪還の野望という、三つの主要な筋が複雑に絡み合いながら進みます。ドラマシリーズでは、内戦の発生時期が小説版とは異なる設定になっています。

ウェスタロス

物語の主要な舞台となるウェスタロス大陸は、南アメリカ大陸に匹敵する広大な土地です。北部は極寒の地であり、〈野人〉と呼ばれる敵対的な人々が住んでいるため、未開拓のままです。大陸は、かつて七つの独立した王国に分かれていましたが、ターガリエン家の支配下で統一され、各領域は有力な名家によって統治されています。統一後も、これらの領域は「七王国」と総称されています。

七王国の社会は封建制に基づき、大小の領主が領民から税を徴収します。これらの領主は、各領域を統治する有力な名家に忠誠を誓います。王は常設の小評議会によって統治を補佐されます。小評議会には、〈王の手〉、法相、蔵相、海相、スパイの頭、グランド・メイスター、〈王の盾〉総帥などが参加します。重要な議題を決定する際には、ウェスタロスの貴族を招集した大評議会が開かれることもあります。

七王国には、北部、〈壁〉、鉄諸島、リヴァーランド、アリンの谷間、西部、河間平野、ストームランド、ドーンという九つの領域があります。七王国とは、ターガリエン家がかつて統治した土地を指し、大陸そのものを指すウェスタロスとは必ずしも同義ではありません。

ウェスタロスは不規則な季節変動に見舞われており、何年も続く夏の後には、同様に長く厳しい冬が訪れるとされています。結婚は神聖なものとみなされ、私生児は差別されます。高貴な生まれの私生児には、各領域で定められた姓が与えられます。

北部: ウェスタロスの北半分を占め、スターク家が統治する広大な地域。寒冷な気候で人口は希薄です。北部の私生児は「スノウ」姓を与えられます。
壁: 七王国の北の境界にある巨大な氷と石の壁。〈冥夜の守人〉によって守られています。壁の向こう側は、野人が住む未開の地です。
鉄諸島: ウェスタロスの西岸沖にある7つの島々からなる地域。ヴァイキングのような文化を持つ鉄人が住んでいます。私生児は「パイク」姓を与えられます。
リヴァーランド: トライデント河の流域に広がる肥沃な地域。タリー家が領主を務め、数々の城塞があります。私生児は「リヴァーズ」姓を与えられます。
アリンの谷間: 月の山脈に囲まれた肥沃な谷。アリン家が統治し、難攻不落の高巣城があります。私生児は「ストーン」姓を与えられます。
西部: リヴァーランドの西に位置し、ラニスター家が統治する地域。貴金属が豊富です。私生児は「ヒル」姓を与えられます。
河間平野: タイレル家が統治するマンダー河流域の肥沃な地域。オールドタウンなどの重要な都市があります。私生児は「フラワーズ」姓を与えられます。
ストームランド: キングズランディングとドーン海の間の地域。バラシオン家が統治し、ストームズエンドなどの城塞があります。私生児は「ストーム」姓を与えられます。
ドーン: ウェスタロスの最南端に位置し、マーテル家が統治する乾燥した地域。ロイン人の影響が色濃く残ります。私生児は「サンド」姓を与えられます。

エッソス

ウェスタロスから〈狭い海〉を隔てた東には、広大なエッソス大陸があります。エッソスの西側には自由都市群が点在し、それぞれが独自の文化と歴史を持っています。南部には、奴隷商人湾やヴァリリアの廃墟があります。内陸部にはドスラクの海と呼ばれる草原が広がり、遊牧民のドスラク人が暮らしています。

エッソスの南には、未踏のソゾリオス大陸があります。この大陸は、ジャングルが広がり、疫病が蔓延しているため、ほとんど探検されていません。

宗教

ウェスタロスでは、〈七神正教〉が最も有力な宗教ですが、北部では〈古の神々〉が信仰されています。鉄諸島では〈溺神〉が信仰され、ドーンではロイン人の宗教の影響が残っています。エッソスでは、ル=ロールなど様々な宗教が信仰されています。

古の神々: 自然を崇拝する宗教で、ウィアウッドの木が中心となります。
七神正教: アンダル人によってもたらされた宗教で、七つの側面を持つ神を崇拝します。
溺神: 鉄諸島で信仰される、海を崇拝する宗教です。
母なるロイン: ロイン人が信仰する、川を擬人化した神です。
ル=ロール: エッソスで信仰される、火を崇拝する宗教です。

生物

ウェスタロスの主な住人は人間ですが、他にも巨人、森の子ら、異形といった知性を持つ種族が存在します。また、ドラゴンやクラーケンなどの神話的な生物も登場します。物語には、馬、狼、マンモス、野牛などの現実世界における動物に加え、神話に登場するような生物や植物が登場します。

この世界は、複雑な人間関係と政治的陰謀、そしてファンタジー要素が絡み合った、壮大な物語の舞台となっています。

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