永井陽子

永井陽子（ながい ようこ）は、1951年4月11日に愛知県瀬戸市城屋敷町で生を受けた、日本の現代短歌を代表する歌人です。惜しくも2000年1月26日に48歳という若さでその生涯を終えました。

経歴

永井陽子は、地元の愛知県立瀬戸高等学校に進学した1967年頃から、古典文学に強く惹かれ、創作活動を始めました。当時、学習雑誌の詩歌投稿欄などに作品を発表していましたが、1969年には短歌結社「短歌人」へ入会し、本格的に現代短歌の道を歩み始めます。

1970年、愛知県立女子短期大学（現在の愛知県立大学）国文科に入学。在学中は学内文芸同好会誌「轍」に参加するなど積極的に活動し、翌1971年には作品『太陽の朝餉』が角川短歌賞の候補作となりました。そして短大卒業を控えた1972年1月には短歌人新人賞を受賞しています。

短大卒業後、1974年4月からは愛知県立芸術大学の音楽学部事務室に勤務。1975年10月には東洋大学国文学科に編入学し、司書資格を取得しています。この時期の多様な経験が、後の作品世界に影響を与えたと考えられます。

短歌活動においては、1978年に『なよたけ拾遺』が第4回現代歌人集会賞を受賞。大学を卒業した1980年には短歌人賞を受賞するなど、着実に評価を高めていきました。1981年4月からは愛知県立図書館に勤務しながら、短歌人編集委員や現代歌人協会会員としても活動しました。

1989年4月からは2年間、母校である愛知県立女子短期大学で非常勤講師を務めました。1991年に母親を亡くした後、名古屋市に転居。1994年4月からは愛知芸術文化センターに勤務しましたが、翌年3月には退職し、同年4月からは愛知文教女子短期大学の助教授に就任しています。1995年7月には歌集『てまり唄』を刊行し、これが翌年に第6回河野愛子賞を受賞するに至ります。

晩年は病と闘い、1999年2月から約40日間肝炎のため入院。同年10月には休職を余儀なくされました。そして2000年1月26日、48歳という若さで急逝しました。死因については公表されていませんが、一部の文献では自殺であった可能性も記されています。墓は愛知県瀬戸市城屋敷町の慶昌院にありましたが、現在は墓石なども撤去されています。

しかし、その功績は忘れられることなく、2013年からは母校である愛知県立瀬戸高等学校の主催により、「永井陽子短歌大賞」が開催され、後進の育成と顕彰が行われています。

作風

永井陽子の作品は、音楽に関連する言葉やイメージを巧みに取り入れ、優しく柔らかな調べを持つ点が大きな特徴です。旋律を思わせるようなリズム感や、澄んだ音色が感じられる抒情的な歌を多く残しました。

没後に出版された遺稿集『小さなヴァイオリンが欲しくて』は、短歌結社「短歌人」の永田吉文氏が雑誌に掲載された遺稿を探索・データ入力し、歌人の小池光氏が栞文をまとめ、歌人の高瀬一誌氏が解説を執筆するなど、多くの関係者の手によって編まれました。この遺稿集の栞には、岡井隆氏、松平盟子氏、藤本喜久恵氏、小池光氏といった著名な歌人たちが寄稿しており、彼女への敬意と親愛の情がうかがえます。

特に松平盟子氏は、永井自身が自分を「噛みつきウサギ」と称していたという印象的なエピソードを紹介しています。また、遺稿集本文には、小池光氏との往復書簡が「うさぎめーる」として収められており、これも彼女の人柄や交流を示す興味深い資料となっています。小池光氏は、永井が「短歌人」の特集で行った「一首に使用できるひらがなは八文字以内」という制約のある作歌実験において、普段の作風とは異なる漢字を多用した歌で見事にその課題に応え、高い評価を得たことに触れています。

著書一覧

『葦牙』（1973年・愛知県立女子短期大学文芸部、歌集）
『なよたけ拾遺』（1978年・短歌人会、歌集）
『樟の木のうた』（1981年・短歌新聞社、歌集）
『ふしぎな楽器』（1986年・沖積舎、歌集）
『なよたけ抄』（1991年・沖積舎、選歌集）
『モーツァルトの電話帳』（1993年・河出書房新社、歌集）
『てまり唄』（1995年・砂子屋書房、歌集）
『小さなヴァイオリンが欲しくて』（2000年・砂子屋書房、遺歌集）
『モモタロウは泣かない』（2002年・ながらみ書房、遺稿集）
『永井陽子全歌集』（2005年・青幻舎）

彼女の残した作品群は、今なお多くの人々に愛され、現代短歌において独自の輝きを放っています。

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