永仙院

永仙院について

永仙院（ようぜんいん）は、かつて茨城県古河市桜町に存在した臨済宗の寺院です。この寺院は、鎌倉の円覚寺の末寺であり、山号を金蔵山、院号を永仙院と称していました。正式な表記は「永僊院」ですが、「永仙院」の略字が一般的に使われています。古河公方との深いつながりを持ち、その歴史を今に伝える貴重な場所です。

歴史

永仙院の歴史は、初代古河公方である足利成氏が、春貞周乾を開山として「乾享院」という名で建立したことに始まります。この寺院は、もともと鎌倉円覚寺の系列に属していました。その後、第4代足利晴氏の菩提寺となる際、晴氏の法号にちなんで「永仙院」と改称され、開山も季竜周興に変わりました。

歴代の住持の中には、政治の舞台で活躍した人物も多くいました。戦国時代の季竜周興は、古河公方の晴氏や義氏の側近として仕え、江戸時代初期には、三伯玄伊と天甫碩円が円覚寺の住持となり、円覚寺の再建に尽力しました。江戸時代後期の資料である『許我志』や『古河志』には、足利成氏から義氏までの歴代古河公方の位牌が安置されていたことや、公方家から寄付された足利尊氏の偃月刀があったものの、貧窮のため売却されたという記述が残っています。また、『古河志』では、徳源院や松月院とともに、永仙院が古河の「足利開基三ヵ院」の一つとして紹介されています。

しかし、江戸時代後期になると無住持の状態が続き、明治4年（1871年）に廃寺となり、三ヵ院は栃木市藤岡町蛭沼の山王寺に合併されました。山王寺は古墳の上に建てられた寺院でしたが、古河から遠すぎたため、旧檀家が過去帳を古河に引き上げ、さらに山王寺自体も太平洋戦争中に焼失・廃寺となりました。

現在、永仙院の跡地は古河市の文化財（史跡）に指定されており、かつての姿を偲ぶことができます。境内には、永仙院の歴代住持の墓や、古河公方家の侍医で「医聖」と呼ばれた田代三喜の供養碑などが残されています。また、三喜の墓の目印とされた松の木があった場所や、赤穂浪士の一人である吉田忠左衛門兼亮の長女「さん」とその夫である伊藤治興の墓も存在します。

文化財

永仙院の跡地には、以下の文化財が残されています。

田代三喜供養碑・三喜松
三伯玄伊（昌伊）（円覚寺156世）の墓
天甫碩円（昌円）（円覚寺157世）の墓
峻雲玄端（円覚寺159世）の墓
歴代住持の無縫塔（6基）
長谷村青年寄進石灯籠
手水鉢

これらの文化財は、古河市の指定文化財（史跡）として保護されています。

アクセス

永仙院跡地へのアクセスは以下の通りです。

鉄道：JR宇都宮線古河駅西口から徒歩約20分（約1.6km）、タクシーで約10分。市内観光用無料レンタル自転車「コガッツ」も利用可能です。
* 東武日光線新古河駅東口から徒歩約25分（約2.0km）

永仙院の跡地は、歴史と文化を感じられる場所として、多くの人々が訪れています。

もう一度検索