永六輔の誰かとどこかで

『永六輔の誰かとどこかで』は、TBSラジオが制作し、1967年 1月2日から2013年 9月27日まで長きにわたり放送されたラジオ番組です。タレントでありラジオパーソナリティとして知られる永六輔さんが一人語りやゲストとの対話を通して、世の中の出来事や日々の暮らしについて、独自の視点で語り聞かせました。単に情報を伝えるだけでなく、リスナーからの投書を丁寧に読み上げ、それに対する永さんの温かいコメントや鋭い意見を交わすスタイルが確立されており、聴取者との間に深い信頼関係を築き上げた点が、この番組が長く愛された理由の一つと言えるでしょう。

番組の開始当初は『どこか遠くへ』というタイトルでスタートしましたが、1969年 10月6日に現在の番組名に改称されました。永さんのパートナーとして、初代アシスタントを佐藤ユキさんが務めた後、番組終了まで長きにわたり遠藤泰子さんがアシスタントを担当。遠藤さんの落ち着いた語り口と永さんの自由奔放なトークが絶妙な掛け合いを生み出し、番組の安定感と魅力となっていました。

放送時間についても変遷があり、開始から1981年 1月31日までは日曜日を除く週6日の帯番組として放送されていましたが、翌週の2月2日からは月曜日から金曜日の放送に変更され、これが最終回まで続きました。また、編成形態も時代と共に変化し、1985年 4月5日までは独立した番組として放送されていましたが、翌週の4月8日からはTBSラジオの自社制作ワイド番組内（例：『大沢悠里のゆうゆうワイド』など）に内包される形で放送されました。

この番組はTBSラジオの制作によるテープネット番組として、JRN加盟局を中心に全国の民放ラジオ局で放送されました。特筆すべきは、近畿広域圏において、通常JRN系列番組を放送する朝日放送や毎日放送ではなく、NRNシングルネット局であったラジオ大阪がネット局となっていた点です。これは、当時の各局の編成上の都合や、永六輔さんと毎日放送との間にあったとされる確執などが影響していたとされています。

番組を支えたスポンサーも変遷しました。当初は呉羽化学工業、その後は鐘淵化学がスポンサーに名を連ねましたが、1972年頃からは桃屋の単独提供によるネットワークセールスが定着し、番組の顔とも言える存在となりました。桃屋提供時のオープニングでは、尺八による「遠くへ行きたい」のインストゥルメンタルをBGMに、アシスタントの遠藤泰子さんが桃屋の商品名を織り込んだ詩を朗読するのが恒例でした。しかし、2013年4月改編に伴い、桃屋がネット局への提供を終了し、TBSでの放送分のみに絞ったことで、同年3月29日の放送を最後に多くのネット局が番組の放送を打ち切る事態となりました。

番組には、リスナーからの投稿を紹介する人気のコーナーがありました。特に、当時のハガキ料金にちなんだ「七円の唄」（主に金曜日）や、2008年以降はがきの料金が50円になったことに由来する「五十円の小言」（主に木曜日）は、多くのリスナーが日常の出来事や感じた不平不満などを永さんに届け、永さんがそれに応える、番組の根幹をなす企画でした。

2013年 9月27日、番組は約46年9か月の歴史に幕を下ろしました。総放送回数は12,629回に及び、これは同一パーソナリティによるTBS制作のレギュラー番組として、『秋山ちえ子の談話室』が持っていた記録を更新するものでした。番組終了の背景には、桃屋のネットワーク提供終了に加え、パーソナリティである永六輔さんがパーキンソン病と診断されて以降、体調に負担がかかるようになり、医師からの助言や聴取者からの労りの声が増えていたことがありました。永さん自身は番組を「止める」のではなく「休む」と表現しており、TBSラジオでも番組宛の投稿受付を一時継続していました。

レギュラー放送終了後も、2014年から2016年にかけて特別番組が放送されましたが、2016年 7月7日に永六輔さんが逝去。その後、2016年 9月18日に放送された特別番組『永六輔の誰かとどこかで千秋楽』をもって、番組はその50年近い歴史に完全に終止符を打ちました。

その長い歴史の中で、番組内容をまとめた関連書籍も多数出版され、またプロ野球オフシーズンに放送された『六輔七転八倒』など、派生した番組も生まれました。永六輔の柔らかな語り口と深い洞察力、そしてリスナーとの温かい繋がりは、『永六輔の誰かとどこかで』という番組を通して、多くの人々の心に深く刻み込まれています。

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