永昌記

『永昌記』（えいしょうき）は、平安時代後期の公卿、藤原為隆（ふじわらのためたか）によって記された日記であり、別名『為隆卿記（ためたかきょうき）』とも呼ばれています。日記の書名は、為隆の邸宅が、当時の左京四条坊門、すなわち永昌坊内にあったことに由来します。

現存する『永昌記』は、長治2年（1105年）から大治4年（1129年）までの25年間を記録していますが、残念ながらその全てが残っているわけではなく、一部に欠落した部分も存在します。しかしながら、現存する部分だけでも、当時の朝廷における出来事を詳細に知ることができる貴重な史料となっています。

特に、『永昌記』が重要な史料として評価されているのは、堀河天皇、鳥羽天皇、そして崇徳天皇の三代の天皇（白河・鳥羽院政期）にわたる朝廷の儀式や行事に関する記述が非常に詳しいという点です。叙位や修法といった重要な儀式がどのように行われていたのか、具体的な手順や作法、またその背景にある意味までをも知ることができます。これらの記述は、後世において有職故実（ゆうそくこじつ：朝廷や武家の儀式・制度などに関する知識）を研究する上で、重要な資料として重んじられるようになりました。

日記の筆者である藤原為隆は、当時の公卿として朝廷の中枢にいた人物です。そのため、為隆自身の視点から、当時の政治や社会の動き、人々の生活の様子を垣間見ることができます。また、為隆自身の人柄や考え方を知る上でも貴重な手がかりとなります。

『永昌記』は、平安時代後期の朝廷文化や社会情勢を知る上で欠かすことのできない重要な一次資料であり、歴史研究において多大な貢献を果たしています。その詳細な記述は、当時の文化や社会をより深く理解するための鍵となるでしょう。

参考文献

角田文衞監修『平安時代史事典』角川書店、1994年。
増補史料大成刊行会編『増補史料大成 8』臨川書店、1965年。

関連項目

* 藤原為隆

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